【K】戒告のインディペンデント【男主】 (ページ28)

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夏の夢ページ28

ぽたりと零れ落ちた雫に、睫毛を震わせた紫城はゆっくりと起き上がった

「…あつい」

思った以上に弱々しい声に、紫城は長くなった髪をかきあげて、深く息を吐いた
季節はあれから半分以上周り、夏へと移り変わっていた

じわりと手に滲んだ炎を握り締め
紫城は部屋を出た
タンタンとバーに降りると、既に賑やかな室内に、紫城は本日の予定を思い出した

7月25日

吠舞羅は海へとやってきた

「今年こそ来てやったぜ！」

「てか、俺たち人前で露出するの、ちょっとアレだよね…来てから言うのもなんだけど」

「せやな。
こんな野郎集団が全員お揃いのタトゥーとか、何事やねんって話やで」

遠い目をする十束と草薙に紫城はパラソルの下に腰を下ろした
ナンパだとはしゃぐ千歳に坂東が乗り
草薙と十束はさらりと流し
出羽は目をそらす

「A！」

「するわけないじゃん」

紫城もそう断れば、2人は気合を入れてそこを離れる
相変わらず、夏の鎌本は黄色い悲鳴を浴びていたし
サーフィンを嗜んでいた八田も注目を集めていた

ぼんやりとそれを見つめていた紫城は
早々に寝に入った周防と
寛ぐ草薙がパラソルに入ったことによりそこから出ると
浅瀬に入った

「シジョウ」

ハッと紫城は自身の手に触れた体温に振り返った
可愛らしい水着に身を包んだアンナと、パーカーを羽織ったままの十束が、どうやら海に入りに来ていたらしい

「…な、に？」

「髪、結んで欲しい」

「あ、ああ…うん、いいよ」

紫城は手首に付けていた髪ゴムを外すと
その場でアンナの髪に触れる

慣れた様子でツーサイドアップに仕上げていく

「…タタラ、カメラごめんね」

「…！なーに、アンナ。まだ気にしてたの？」

少ししょんぼりと眉を下げて
突然謝ったアンナに十束はもちろん
髪を結っていた紫城も瞳を瞬かせた

数ヶ月ほど前
まだ夏が来るより少し前に、アンナと周防が2人で出かけた
その時に十束のカメラを壊してしまったのだ

十束は気にしていないのだが
どうやらアンナは思い出を残せないのが悲しいらしい

端末で撮るのは違うと否定するアンナに
十束は優しく微笑みかけた