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眠り姫、柔らかな午後に ページ48

カツカツと音を立てて歩けば、使用人達はどこかよそよそしく頭を下げる。
オレはそれを無視してまた足を速めた。

屋敷の裏庭へ出て、奥へと続く石畳の上を歩いた。途中でレンガに変わるその道を進んで行けば、ベンチのある、少し開けた場所に突き当たる。

「……」

そこのベンチには、いつも先客――沢田紫苑がいる。
それは今日も然り。だが、

「寝てるのか……?」

うなだれた小さな身体は、オレが来たことに気づく様子もなく、薄いその肩を上下させていた。
風に攫われるかのように揺れる銀の髪は、日の光を受けてキラキラと輝いていた。

近寄ってみるが起きる気配はない。
ゆっくりと手を伸ばし、透き通るような白い頬に触れた。
ふに、と柔らかな感触が指先を刺激する。それでも起きないその少女に少々苛立ちを感じたが、ため息をついて手を離した。

「……ざ、んざす」

ふと、少女が小さく声を上げた。
それは玉を転がすように心地よく、オレの名を紡いでいた。

「ッ……」

咄嗟に片手で口元を覆う。
必死に隠してはいるが、オレはこの少女に少なからず好意を持っている。
それは果たして友愛か、愛念か分からないままだが。

透き通る銀の髪を一房手に取り、口づけをした。
今は、これで、これだけで十分だ。
そう自分に言い聞かせ、彼女の隣に腰を下ろす。

暖かな日差しに目を閉じ、口元を緩めた。

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- いえいえー当然の事を言っただけですー喜んで貰えて光栄ですよー それと、音域を広げる練習、頑張ってくださいー諦めずに頑張れば報われるはずですからねー ふむ、来月ですかーコトハ@白亜さんの小説は奥が深いのでーワクワクしますねー楽しみにしてますー (2015年8月21日 12時) (レス) id: 7c8a29757a (このIDを非表示/違反報告)
コトハ@白亜(プロフ) - 杏さん» 返信ありがとうございます。そう言っていただけると作ってよかったと思えます…ありがとうございます。なるほど、その方法がありましたね…早速試してみようと思います。アドバイスありがとうございます。せめて再来月までに公開できるよう頑張ります…! (2015年8月20日 18時) (レス) id: 5c05607229 (このIDを非表示/違反報告)
- 大丈夫ですー、ミーも返信遅くなってすみませんー 気に入った作品にコメントするなんて当たり前じゃあないですかー 音域が狭い、ですかーピアノで音を取ると結構出やすいですよーあとは、歌いたい曲を練習してー音域を広げるのもいいと思いますー 続編、待ってまーす (2015年8月20日 15時) (レス) id: 7c8a29757a (このIDを非表示/違反報告)
コトハ@白亜(プロフ) - 杏さん» 返信ありがとうございます、遅くなってすみません!わわ、続編までコメントいただけるんですか…ありがとうございます!嬉しいです!音痴というか出せる音域が狭いんですよね…なので歌が上手い人羨ましいのです… (2015年8月19日 0時) (レス) id: 5c05607229 (このIDを非表示/違反報告)
- はいー、頑張って下さいー続編出来るまで此処を見に来たりしましょうかねー 一番に作品を見に行ってコメントしたいですー…音痴?そんなのカラオケが悪いんですー声の質は様々じゃないですかー (2015年8月17日 11時) (レス) id: 81089b7519 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:コトハ | 作者ホームページ:   
作成日時:2014年6月13日 17時

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