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…
1つ深呼吸をし 壁に身を預ける
雨のせいか静かで、耳を澄ませばあいつらの声がよく聞こえた
「…みんなもう室内練習してるの?」
…俺も行くべきなんだろう、イレブンバンドにはお知らせとして"練習場所の変更"ときていた
(この状況で真っ先に練習に行けるほどサッカーバカじゃねーよ)
俺は2人のつまんねー会話のうちにバンドの電源を切った
足音が近づいてくる
一星だろう、今顔を合わせる事も鉢合わせもごめんだ
少し離れていようと階段の方へ足を踏み出す
「ーー?…」
「…ッ…」
俺の足は止まった
一度、心臓が跳ね上がり 足先が固定されような感覚に陥る
進もうとしていたせいで俺は前のめりになった
(あいつは意識が無かったはずだ。
俺がいた事も知らない。)
雨の音が消える
「…いいえ」
あいつがそう言い放つまでの間を長く感じると
同時にほっとしていた
(ああ、それでいい)
小さく息を吐く
雨の音が戻ってきた
俺はさっさと離れようと歩き出す
だが、嫌なくらいこの静かな空間も俺を相当好まないらしい
この最高につまんねーやり取りを俺の耳に刻ませた
「じゃあ、一星が運んでくれたのか!」
「はい、
明日人くんずっと意識がありませんでしたから」
「そっか」
…俺は足だけを早く動かす
上への階段を駆け上がった
足が重い…手すりを掴んで体を引き上げる
たったこれだけ
なのに酷い息切れだった
登りきると同時に俺は息を殺した
だが、音を消そうとすればするほど、別の音が聞こえてくる
…心臓がうるさい
このままだとあいつらに聞こえそうで、俺はジャージにシワがつく位掴んだ
(うるせぇ…うるせぇ! 落ち着け 聞かれる )
階段全体に鼓動が響いている気がして
俺は耳を塞ぐ
それでも内側からの音は消えない
俺は足の重さに耐えきれず、
とうとうしゃがみ込んだ
(…なんなんだ 俺は何やってんだ)
訂正もしねぇし、受け入れきれてもいない
(現状に納得しなさすぎだろ…
さっき決断したばっかじゃねぇか…)
掌を見つめる
あの時扉を開けなかった自分を憎く思った。
…
(やっぱり中々、おちないよなぁ…)
階段を降りながらやり取りを思い出す。
『…はい、明日人くん ずっと、意識がありませんでしたから…』
『そっかぁ…』
少し寂しげな笑顔だった
ありがとうと続いた彼からの感謝の言葉に、俺は嬉しさを感じなかった。
…
(窓の外にも伏兵か…)
曇り空と同じ色が思い浮かぶ
俺は1段飛ばしながら階段を降りた
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作者名:Rein | 作成日時:2018年11月19日 3時