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西陰のしっかりとした力強い声が、心に染み込んでいく
(野坂すごいな、やっぱり周りをよく見てるんだ…)
けど俺の頭は今だ留まったままだった
彼の言葉が全身に染み込む感覚に身を委ねるしかない
「同時に、野坂さんは灰崎も見ていた。だから 灰崎がお前を…徐々に気にかけていくのも、しっかり見ていた。」
心が暖かくなる
頭の中が少し、動き始めた
「あの1度の出来事で、お前はその繋がりを断つつもりか
…あいつの、灰崎の話は聞いたのか、納得がいくまで追求したのか?」
「…してない」
思考がクリアになっていく、俺は悩みすぎてたのかな
もっと単純に、行けばよかったのに
「灰崎は今、鬼道さんもいない状況下で精神が安定していないかもしれない。周りの奴らも話しかけることすら出来ないままだ。
…今話を聞けるとしたら、お前くらいだろう」
「…うん」
西陰はもう一度カゴを持ち直す
「なら、もうわかったはずだ。
真正面から聞きに行け。部外者が嫌ならあの時みたいに自分から首を突っ込め、お前だからそれが出来る。
出来ないことを探すな、出来たことを繰り返せ。」
叱咤のような、声援ともとれる声
冷えていた体が温まっていく
「…今のお前には、その方が合っているんだろ」
西陰は少し笑った
「うん、 …そうだね
ありがとう 西陰。」
「礼はいい、早く 行け」
俺は頷いて、温まった身体でもと来た道を走った
(繰り返すだけなら… 今の俺にできるかな)
新しくじゃなくて、前のできたことなら 自信が持てる まだ手が届くかもしれない
そんな希望を持って俺は走る
こんなに清々しく走るのは久しぶりだった
…
俺はあなたの帰ってくる場所を守るために何が出来ただろうか
一星を見張れと鬼道さんに頼まれ、見ていたが正直掴めない
わざとらしく煽っている、トラブルメーカー、信用を置かないし置かせない
心が凍っているみたいだ
それが灰崎と稲森の溝を深めていってるのは薄々気づいていたが…
(稲森が、あれほどまでになるとは な…)
野坂さん達の繋がりを作ったお前だろう、どうして 灰崎の傍にいない
灰崎はお前に沿おうとしていた
だが、お前は離れようとしていた
…間違いなく、一星が原因なのだろう
伊那国の友達も一星と近いらしい
お前達も一星の側につくのか
もう、俺に出来ることがわからない
「…野坂さん」
俺はあなたの帰ってくる場所を守りたかった
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作者名:Rein | 作成日時:2018年11月19日 3時