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(…危害…か)
俺は頭をリセットする
もう少しで根本を間違えるところだった
(一星は明日人に危害を加えていない)
あれだけのチャンスを彼は全て振ったことになる
それに、本当にそのつもりなら…わざわざ俺達にその話はしないだろう
警戒させる様な真似、スパイならしない。
「…入れ違い?」
そもそも俺は"明日人に付くか否か"の判断材料を得る為にこうしている
「分かりません、明日人くんも知らない様でした。…どうしてそんなことを?」
(それに、一星は寧ろコミュニケーションを取ろうとしたのだ。俺達の誘いを真っ先には受けず、躊躇いも見せた)
それがどういうことか、今の俺には何となくわかった
彼は危惧していたのだ俺達のことも
(…彼は、無意識でも 明日人を気にかけ始めている)
「…いや、ならいいんだ…」
俺は無性に嬉しくなった
疑いから始めるとやっぱり真相には辿り着きずらいなぁ…
あの一言で、明日人と灰崎に亀裂ができたと同時に、皮肉にも一星とは繋がりができたのだ
(お互いがそれに気づけばきっと…)
俺の"思い"は叶ったも同然だ
一星は明日人を気にかけている
そして明日人も一星を敵じゃないと見なした
なら、俺達が言うまでもない。
「明日人くんが!」
俺は驚いて彼を見る
彼から声をかけられるのは初めてだった
「……」
彼は目を1度窓へ向け
「あの部屋の窓際は寒いって、言ってました」
小さく そう言った
手は握り締められたままだ
言いたかったことはきっと別にあるのだろう
だが、俺はそれを問い詰める気はもう無かった
「そっか、確かに雨も降ってるし カーテンあっても寒いだろうな」
歩きながらバンドをみる
予想していた時間とぴったりだ
「もうそろそろ明日人も来る。」
…これでもう、
俺に出来ることはそんなに無いだろう
「…そうだ!一星!驚かせよう!」
「えっ」
「明日人びっくりするぞ!」
「えっ、急ですね…」
廊下の柱に隠れると渋々一星も隠れた
それから数秒後、遠くから走る音が聞こえる
一星とアイコンタクトを取り、指で数える
(明日人がここを通るまで、あと
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作者名:Rein | 作成日時:2018年11月19日 3時