最後の夢/前 ページ49
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懐かしい、暖かい風が頬を撫でる。
いつの間にか閉じていた目を開け周りを見渡すと、そこはまたあの場所。
人気が無く、民が消え去った荒跡。
これは、今まで見ていた夢の地とは違う。
最初は彼に会う前。
次は彼と出会い、共に在った時。
その次は………どちらかといえば、ギルガメッシュの見た夢、に近いと思う。
今は、そのどれとも異なる。
これはギルガメッシュが不死を求めて旅に出た後、荒廃してしまったウルクのように感じる。
彼の隣にいる事をを唯一許されていたあの人が崩れ去った後の世界だ。
でもそうなのだとしたら、一つだけおかしな点がある。
だって、私の目の前に立っている美しい彼は、紛れもなくエルキドゥだから。
緑の長髪が風で揺れ、女性とも男性とも言い難い、整った造形。
そして暖かい優しさをはらんだ透き通るような瞳。
私にはわかる。直接見たことは無くても、記憶を通して間接的に姿を心に刻んでいたから。
最初の夢で見た姿が本物だったのは、偶然かそれとも――
「初めまして――ではないけれど、こうやって面と向かって話すのは初めてですね。」
『……そうですね。……貴方はエルキドゥ、で合っている?』
「ええ、僕の名はエルキドゥ。神に造られた兵器だ。」
『兵器?…とてもそうは見えないけど。』
「紛れもなく、僕は人間ではありませんよ。ただの泥人形だ。」
にこやかに微笑みながら告げられた、残酷な言葉。
自らを無機物と名乗り、それを本当に心の底から受け入れている。
事実だから、と…大したことではない、と。
それがとても悲しかった。
『あの人は……そんな事一度も思っていなかった。』
「―――ギルが?」
『そう。でも、貴方もそのことは知っていたんでしょう?』
記憶とは記録ではない。その時何を見て、何を感じたのか。そのすべてが伝わってくるものを指す。
私の起源は、そういう他人の過去の感覚を疑似的に自分のものとして体験するものだ。
つまり私はあの時、あの瞬間、偽りだとしても、ギルガメッシュその人の感覚を身を持って味わったといえる。
だから、私の言葉に嘘は無かった。
『私はこの時代には存在しなかったけれど、それでも知っている。彼がどう思っていたのか。』
それ故、私は記憶を見たことをひどく後悔したのだから。
きっとギルガメッシュには貴様ごときが知った様になどと言うだろうけど、
言う必要もないだろうけど
それだけは言いたかった。
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カエデ - もう更新は絶望的かもしれませんが、いつまでもお待ちしております😭 (10月8日 14時) (レス) id: e7e0135c10 (このIDを非表示/違反報告)
指導者は白痴、かかってこいや当局 - まじかよ本当にいいとこで終わってんな、、、 (2021年8月26日 23時) (レス) id: 55ab4f5815 (このIDを非表示/違反報告)
Na Ryu(プロフ) - うそん!!?めっちゃ良いとこで終わってるー!! (2021年1月4日 9時) (レス) id: e0675e6765 (このIDを非表示/違反報告)
ちぃちゃん(プロフ) - コメント失礼します。ギルガメッシュが好きでこの小説を読み始めました。続きがものすごく気になります!更新頑張ってください!! (2020年6月12日 17時) (レス) id: 5728e25ca4 (このIDを非表示/違反報告)
ゆめの - コメント失礼します^o^凄く面白いです!更新頑張って下さい!応援しています! (2020年4月21日 19時) (レス) id: a922e9fda4 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:またたび | 作成日時:2016年6月19日 6時