死 ページ46
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男の右手にある赤い紋様は間違いなく、マスターの持つ令呪のそれだった。
そしてようやく理解した。
『お前は、キャスターのマスターか。』
「いてて…。また決めつけ?まあ、うん…合ってるけどねえ。」
不気味な笑みを浮かべぬらりと立ち上がった青年を見てぞわりと背筋が粟立つ。
根本の部分で拒絶している様な、異常な感覚に初めて恐怖を覚える。
『何故、彼女を殺した?』
理由を問うと、青年は悪気など一切感じさせずに優しい声色で答えた。
「いやさあ、あのお姉さんが俺の邪魔してくるから…仕方なく死んでもらったんだよねえ。」
男はアートの材料の子供を連れていこうとした時に偶々居合わせ男の様子に不信感を覚えた前田皐に問い詰められそのまま首を掻き切った、と私に笑いながら言い放った。
魔術師というものは残酷で非常な生き物だ。故に生贄などの犠牲は当然の様に受け入れるし人の生死には強い耐性をもっている。
だが、この男は魔術師ではない。それは魔力の強さ、質から見てわかる。
それなのに、当然の様に人の命をその手で潰している。罪悪感の欠片もなく。
初めて出会った、本物の殺人鬼だ。
「俺達、今からどでかいパーティーを始めるんだ。お姉さんも参加する?」
『何?』
そして私は自分の軽率さを呪った。
目の前の男がマスターである限り、近くにいるはずの存在に注意を払わなければならなかった。
背後に現れた今までとは比べ物にならない真っ黒で濁った魔力は、明らかに魔術師のものではなかった。
サーヴァント。
一瞬の本能で先ほど自分が走っていた道へ引き返す。
後ろを振り返る余裕などないし、もし気を向ければ心臓を抉られる予感があった。
ギルガメッシュに殺意を向けられた時よりも何倍も死を直感している。
あともう少し、あと少しで広い道へ出ることができる。
しかしそんな希望を打ち砕くようにとてつもない痛みが体を走った。
同時に来た衝撃で無様に地面に倒れ伏すと、赤い液体がアスファルトの溝を伝っていくのが見えた。
心臓は運よく潰されなかったようだが、代わりに胃から肺にかけての肉が抉られている。
うまく呼吸もできず、ゆっくりと近づいてくる異形のものから逃げることもできない。
((ここで死ぬのか、私は?))
遠のく意識の中、くだらないことを考えながら
それでも片隅に映る赤い眼の男の姿だけははっきりとこびりついていた。
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カエデ - もう更新は絶望的かもしれませんが、いつまでもお待ちしております😭 (10月8日 14時) (レス) id: e7e0135c10 (このIDを非表示/違反報告)
指導者は白痴、かかってこいや当局 - まじかよ本当にいいとこで終わってんな、、、 (2021年8月26日 23時) (レス) id: 55ab4f5815 (このIDを非表示/違反報告)
Na Ryu(プロフ) - うそん!!?めっちゃ良いとこで終わってるー!! (2021年1月4日 9時) (レス) id: e0675e6765 (このIDを非表示/違反報告)
ちぃちゃん(プロフ) - コメント失礼します。ギルガメッシュが好きでこの小説を読み始めました。続きがものすごく気になります!更新頑張ってください!! (2020年6月12日 17時) (レス) id: 5728e25ca4 (このIDを非表示/違反報告)
ゆめの - コメント失礼します^o^凄く面白いです!更新頑張って下さい!応援しています! (2020年4月21日 19時) (レス) id: a922e9fda4 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:またたび | 作成日時:2016年6月19日 6時