召喚の儀/前 ページ3
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『………ギルガメッシュ……』
師である時臣が言ったその名前に、聞き覚えがあった。
『……古代ウルクの王……英雄の中の英雄と言われるあの、ギルガメッシュですか?』
「ああ、その通りだ。」
『そして…その蛇の皮が……彼を呼び出す聖遺物…と?』
到底信じられなかった。
いや、勿論魔術師である以上、英霊の召喚にその英霊に関する聖遺物が必要なのはわかっている。
だが、それでも古代の英雄、現代でも名の知れた英雄を呼び出す聖遺物が
こんな薄汚い蛇の脱皮の化石だと師は言うのだ。
「信じられないといった顔だね。まあ、無理もない。綺礼も同じ反応をしていたよ。」
『言峰さんが…』
正直に言うと、言峰綺礼という人物が苦手だった。
人のことを言える立場ではないが、彼は何も欲というものを持ち合わせていない。
端的にいえば、何を考えているのかわからない、ということだ。
「それで、本日の例刻に召喚の儀を行おうと思う。君も来てくれるね、真彩?」
『勿論です、時臣様。』
優雅にワインを嗜む師に深々と頭を下げ、頭から言峰の顔を消す。
「そういえば、神崎氏には連絡を入れたのかい?あの人も、そろそろ実の娘の事が気になり始めている頃じゃないか?」
『…………そうですね、後で電話でも入れておきます。』
あからさまに嫌な顔をした私を、師は全く気付いていない。
相変わらずの天然。
『では、これで』
「ああ、お疲れさま」
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師にはああいったものの、電話する気など毛頭なかった。
『……ギルガメッシュ……』
魔術師として、大概の英雄については知っているが、彼はその中でも異質な存在だった。
絶対的な暴君。半神半人。世界で初めて物語を作られた王。
この世全ての財を集めし男。
果てしない過去の伝説。
『……本当に召喚できたのなら……それは即ち師の勝利を意味する……』
そうなれば願ったり叶ったりだ。
ただ、それよりも
彼の姿が如何様なのか
特に理由はないが
物凄く気になった。
『……そういえば、凛ちゃんが禅城の家に行くのは今日だった……』
時臣の娘、凛の愛らしい笑顔を思い浮かべながら階段を下りる。
自らの家の事、父親のことを忘れようとするように
ただ夜の召喚のことを考えていた。
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カエデ - もう更新は絶望的かもしれませんが、いつまでもお待ちしております😭 (10月8日 14時) (レス) id: e7e0135c10 (このIDを非表示/違反報告)
指導者は白痴、かかってこいや当局 - まじかよ本当にいいとこで終わってんな、、、 (2021年8月26日 23時) (レス) id: 55ab4f5815 (このIDを非表示/違反報告)
Na Ryu(プロフ) - うそん!!?めっちゃ良いとこで終わってるー!! (2021年1月4日 9時) (レス) id: e0675e6765 (このIDを非表示/違反報告)
ちぃちゃん(プロフ) - コメント失礼します。ギルガメッシュが好きでこの小説を読み始めました。続きがものすごく気になります!更新頑張ってください!! (2020年6月12日 17時) (レス) id: 5728e25ca4 (このIDを非表示/違反報告)
ゆめの - コメント失礼します^o^凄く面白いです!更新頑張って下さい!応援しています! (2020年4月21日 19時) (レス) id: a922e9fda4 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:またたび | 作成日時:2016年6月19日 6時