＊ ページ38
お風呂から出てきた翔太は、上裸で某雑誌を思い出してしまった。
nb「なんかTシャツ貸してくんね？」
dt「あ、うん…新しいのとかじゃなくていい？」
nb「なんで？」
dt「翔太、ちょっと潔癖じゃん」
nb「まあ…でも涼太のなら平気だよ」
『涼太のなら』
何気なく言っただけのその言葉がすごく嬉しくて、変な夢のせいで寂しくなった俺の心は簡単に喜んだ。
dt「…そっか」
nb「うん。そろそろ寝よーぜ」
dt「じゃあ翔太ベッドで寝なよ、俺はソファーで」
nb「え？いや、涼太がベッドだろ」
dt「いや」
nb「ダメだって…体調崩してるんだろ？」
dt「…まあ」
少し寝るのが怖い。
またあの夢を見て寂しくなったり、息苦しくなるのが。
暗い海の居心地は決して悪くないけどあの蒼を感じてしまったら、あの暗さにはもう戻りたくない。
nb「…なんか怖いの？」
dt「え？」
nb「急に暗い顔になるから…」
dt「いや、ううん。大丈夫…」
nb「大丈夫じゃないでしょ…一緒寝よ」
dt「え、いや」
nb「はいはい」
普通な顔して、寝室に向かう。
dt「え、翔太」
nb「はい、おやすみ」
dt「…おやすみ」
電気を消す。真っ白な天井。
会話のない2人。
隣を向くと翔太がいるから変に向けなくて、ずっと上を見ている。時計の音だけが響く。
nb「…昔さ、涼太の家でこんな感じで寝てたよな」
dt「そうだったね」
nb「涼太がお化け見たとか言ってなんでか俺と寝るっていう」
dt「…そんなこともあったね」
nb「おう」
dt「…あの時は、恋人同士になるなんて思わなかったな」
nb「アイドルになるとも思ってなかったけどな」
dt「確かにね」
nb「…なんかあったらさ、呼んでよ」
dt「ん？」
nb「…もう幼なじみじゃないけど。恋人になった途端気使うのは違うって言うか、子供の時みたいに遠慮なしに頼って欲しいっていうか」
少しだけ、翔太の顔を盗み見る。
天井を見たまま、真剣な顔をして言うから少しだけ泣きそう。
dt「…真っ暗な海の中に1人でいる夢を見て、怖いというよりは寂しくて」
nb「…うん」
dt「目が覚めたら、寂しさだけが残っててそしたら翔太に全然会えてないのが辛くなった」
nb「…そっか」
dt「ごめん。めんどくさいよね」
nb「…大丈夫。寝よ」
それだけ言うと、俺の左手を握ってくれる。
少しだけ強い力に安心して意識を手放した。
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作者名：stanley | 作成日時：2023年7月16日 1時
