すのまんまの9人 3 (ページ14)

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mm side

無性に会いたくなった。
当たり前に毎日会ってるのに、今日はいつもより早く会いたくなって遅い時間なのに年甲斐もなく小走り。

チャイムを鳴らすと、インターホン越しにびっくりしてる康二の顔が見えて思わず笑ってしまった。

kj「めめ！？どうしたん！？今日は舘の家だって…」
mm「はぁはぁ…会いたくて」
kj「嬉しい！俺もめっちゃ会いたかってん！」

そう言ってぎゅうぎゅうと抱きついてくる。
この人懐っこさは俺だけにしてほしいけど、この子犬みたいな俺の恋人に、それは無理な気がする。

mm「康二、俺走ってきたから汗臭いかも…」
kj「んーん、めめのええ匂いする…」

そう言って離れない。
顔を見たいけど、きっと見せてとお願いしても恥ずかしがるだろうから諦めて諭す。

mm「康二、まだ玄関だから…いれて」
kj「あ、そやった、どうぞ」
mm「ありがとう」
kj「めめ」
mm「ん？」
kj「おかえり」
mm「…ただいま」

一緒に住んでるわけじゃないのに、いつもおかえりを言ってくれる。当たり前のように返していたけど恋人になる前とは違う距離感を改めて感じて、じんわり嬉しくなる。

mm「お邪魔しま…す、机の上、すごいね」
kj「あ！そやねん！これな、今日現像してきてん、一緒にみる？」
mm「見たい」

机の上には康二が撮った写真がたくさん並んでる。

kj「俺はなー、このめめがお気に入り」
mm「え、これいつ撮ったの？」
kj「この前うちに来てた時、めめがコーヒー熱がってるの可愛かったから」
mm「なんでそーゆうとこばっかり」
kj「めめやって、俺の寝癖とか寝顔ばっかり撮るやん」
mm「まあそうだけど」

君にはかっこいいと思っててほしいんだよ。

kj「俺はめめの普通なとこが好きやねん」
mm「なにそれ」
kj「だって、素のめめを見れるのは俺だけやん！」
mm「…そうだね」

俺だってそう。
変についた寝癖、よだれあとが残る寝起きの顔。
不貞腐れた顔、コーヒー豆を回してる時の変なポーズ。
ひっついてくる時に決まってちょっと助走をつけるとこ。

そんなひとつひとつを写真にしてきた。
こうじが形にしてくれる当たり前の思い出が、
俺を強くも弱くもしてくれる。

mm「康二、ありがとう」
kj「ん？んん？ええんやで？何かわからんけど」
mm「俺の隣にいてくれて」
kj「めめもやで！」

ほら、何にも分かってないくせに返事をする。
そんな君の当たり前さえ、俺の特別だって。

今日も、おかえりをくれてありがとう。