《トドメの接吻》 愛は誰にでも

想定外 ページ7

尊氏「Aは家で休ませるよ」



長谷部にそう伝え、美尊と母さんに声を掛けて車に乗る。



美尊「Aちゃんもいたのね・・・」



京子「Aさん・・・」



助手席に美尊が座り、後部座席にAを下ろす。



その右隣に母さんが座った。



母さんが心配そうにAの右腕に手を乗せると、Aは顔を歪ませた。



まさかと思いその右腕の袖を捲ると痛々しい傷があった。



京子「Aさんっ」



尊氏「怪我していたのか・・・どうして気付かなかったんだ」



今思えばAはずっと右腕に左手を添えていた。



でも僕はAが震えているのを見て怖がっているからなんだと思い込んでいた。



美尊「大変・・・！病院へ行かないと！」



美尊の言葉を聞きながら僕は後部座席のドアを閉めた。



運転席に乗り込んでエンジンを掛ける。



以前カズマという男に襲われた際に美尊達が利用した病院に向かった。



相当ダメージを受けたのか、疲れ切っている様子のAは目を覚まさない。



時間も遅い為応急処置程度に手当てをしてもらい、家に帰って来た。



京子「空いてる寝室があるわ。そこに寝かせましょう」



Aを横抱きにして母さんの後を付いて行く。



母さんは慌ててベッドを整えAを寝かせる準備をした。



僕は整えられたそのベッドにゆっくりとAを下ろす。



美尊「Aちゃん大丈夫かな・・・」



尊氏「きっと明日になれば目を覚ます。怖い思いをしたんだ、休ませてあげよう」



そう言うと美尊と母さんは部屋から出て行った。



僕はベッドのそばに椅子を移動させて座った。



尊氏「A・・・」



Aの頭をそっと撫でると僅かに微笑んだ気がした。



尊氏「A、どうしてあそこにいたの？」



返事はないと分かっていながらも声を掛ける。



尊氏「ホストと一緒に行ったの？それとも呼び出された？たまたま居合わせたの？」



どんな理由にせよAが怪我したことに変わりはない。



当初の予定としては長谷部の持つビデオテープを取り戻すだけのはずだったんだ。



なのにホストは死に、長谷部に疑われ、Aが怪我を負うまでの大事になってしまった。



尊氏「・・・ごめん」



伝わるか分からないけど謝った。



考えがまとまらない。



並樹グループは欲しいがAといたい。



でも並樹グループを継ぐ為には美尊と結婚しなければいけない。

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