《トドメの接吻》 愛は誰にでも

誰かの為に ページ49

尊氏「・・・Aに出会って、彼女を愛した時か。・・・Aを愛してるから間違ってるのか？Aを愛さなければ・・・こんなに苦しまずに済むのか。・・・利用できるものを利用して何が悪い。邪魔な奴を排除して何が悪い。僕は・・・僕はただ・・・Aを守りたいだけなんだ・・・」



布袋「間違ってないです。あなたは間違ってない。俺は、・・・例え尊氏さんが、俺の知る尊氏さんじゃなくなったとしても・・・味方でいます。俺にはそれしかないから」



布袋は僕を落ち着かせるようにそう言った。



尊氏「僕もそうだよ。・・・Aを守る為なら・・・何だってしてやる」



例え誰かを排除してでも・・・自分を犠牲にしてでも。



Aの為なら僕は何だってできる。






旺太郎Side



宰子の家に来た。



旺太郎「必要なものだけにしろよー？俺ん家も狭いから」



俺はそう言いながらバッグに宰子の私物を詰め込む。



宰子「本当にあなたの家に住むの？」



旺太郎「ここにいたら尊氏が来るだろ。アイツ何か勘付いてんだよ・・・」



俺がそう言うと宰子は不安そうな顔をした。



旺太郎「あぁ！ひょっとして男の家に泊まるの初めてか」



少し茶化すと宰子は動揺した。



旺太郎「それでかー、そうだろ！」



ベッドに座る宰子に近付くと逃げられた。



宰子「あ、あなたの家汚いから」



旺太郎「・・・誰もお前なんか襲わねぇよ」



そう言うと宰子は勢いよく振り返った。



宰子「そ、そんなこと分かってる。美尊さんがいるから」



宰子は横にある棚に置いてあった白い片方しかない靴を手に取った。



宰子「・・・これ、返す」



旺太郎「光太の？」



俺は静かに差し出されたその靴を受け取った。



光太の靴を眺めていると宰子はメモ用紙も差し出して来た。



宰子「これも。・・・お父さんの連絡先聞いておいた。話、してみたら？」



旺太郎「話すことなんかないよ。いつからそんなお節介になったんだよ」



宰子「だって・・・」



旺太郎「いいんだよ。どうせアイツは逃げるだろうから。もう終わったんだよ。忘れろよ」



宰子「あなたも、逃げてる」



俺の言葉を聞いていた宰子は静かにそう言った。



宰子「あなたも、私も、みんな逃げてた。・・・あなたなら、乗り越えられると思う。・・・光太君の為に」



船内に流れ込む大量の海水。



俺の目の前で流されて行った光太。



どうしても忘れられない１２年前の記憶。
　

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