《トドメの接吻》 愛は誰にでも

未来は変わったのか ページ33

男の言葉を待っていると男は口を開いた。



？「か・・・か・・・過去に戻ってやり直してぇ―！」



その言葉に反応して少し離れたところにいたホームレス集団も“おぉー！”と騒ぎ始めた。



尊氏「とぼけないでくれ！佐藤宰子って何者なんだ」



男は僕の顔を見るが何も言わない。



尊氏「堂島旺太郎との関係は」



また僕の顔を見るがそれでも答えない。



僕は背を向ける男の正面に回り込んだ。



尊氏「アイツが上手く事を運べるのは、その女がいるからなのか」



男は写真に目を向けたまま。



尊氏「金か」



そう言って僕が財布を男の前に出すと男は瞬時に財布を見た。



尊氏「金を払えば教えてくれるのか」



？「それより、今日の狂場のレース結果を昨日の俺に教えてやってくれよ。そしたら、俺も、教えてやるよ」



尊氏「ふざけてるのか」



はぐらかしを続ける男に苛立ち始めながらも怒りを隠して口角を上げる。



男は“ははははっ”と笑いにもなってない笑いを浮かべた。



その男の笑いにまたホームレス達が反応する。



ホームレス「俺達にも教えてくれよ！」



ホームレス「大金持ちになりてぇーよー」



？「この女とキスしてぇなぁ」



写真にキスをし出す男を見てホームレス達が盛り上がる。



僕は男の手から写真を取った。



尊氏「・・・また来る」



背を向けて歩き出す。



時間の無駄だったか。



僕が去ったガード下で、男は独り言のように呟いた。



？「あーあぁ。今教えてやったのに」



僕がこの言葉を聞いていれば、未来はまた違った形になったのだろうか。







旺太郎Side



美尊「旺太郎の親戚？」



あれから俺達は宰子の家に上がってあの場の状況説明を行っていた。



旺太郎「宰子っていうんだけど、母方の遠い親戚だよ」



椅子に座る美尊さんの前に宰子と二人で正座をしている。



美尊「でも・・・さっき抱き合ってたよね」



旺太郎「あぁあれは、抱き抱えてたの。こいつ貧血症だから、倒れそうになっちゃって」



俺の言葉に宰子は貧血症の演技をする。



俺はそれに合わせた。



美尊「でも・・・あなたのことは覚えてる。夢で見た」



旺太郎「・・・それは、夢の話でしょ？」



美尊「実際にこうして目の前に！」



旺太郎「あっ！」



俺は美尊さんの言葉を遮って立ち上がる。



美尊「何、どうしたの？」

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