《トドメの接吻》 愛は誰にでも

謎の男 ページ27

エイト「だったらいっそのことキスしまくって１２年前に戻せ！」



宰子「・・・多分、船が沈んだ後にしか戻れないと思う」



俺は俯く宰子の手からメモを奪い取って宰子の後ろに回り椅子に座った。



エイト「こんなもので罪悪感から逃げられると思うなよ。・・・一生使い倒してやる。ほら帰れ！」



俺の言葉に宰子は振り返った。



宰子「・・・５日後、美尊さんが会社に行く。デリバリーのシフトが入ってる」



エイト「シフトが入っただけで、何で１００億が会社に来るって分かるんだよ」



そう言うと宰子は困ったように俯いた。



宰子「・・・じっ実は、に、に、」



エイト「とにかくその日は家で待機してろ」



宰子の言葉を待つ気もなく俺は遮ってそう伝えた。



宰子「襲われた時に戻るの？」



エイト「テープを手に入れなきゃ・・・俺は尊氏を潰せねぇんだよ」



そう言いながら宰子の前に立つ。



エイト「お前は言われた通り待ってろ」



宰子「・・・はい」



宰子は俯きながら出口に向かうが、手前で立ち止まってこちらを振り返った。



エイト「ほら帰れ！」



宰子「はい」



そのまま宰子は何も言わず出て行く。



俺の手元には、宰子の電話番号の書かれたメモが残った。






尊氏Side



僕は会社でエレベーターを待っていた。



チンッという音とともにドアが開いたが、そのエレベーターには奇妙な格好をした男が一人で乗っていた。



？「下へ参りまーす」



そう言いながら１階のボタンを押す男。



僕は特に気にせずエレベーターに乗り込んだ。



ドアを閉めるボタンを静かに連打する男を横目に、男から少し離れたところに立った。



ドアは閉まり、３０階から下がり始めるエレベーター。



？「アンタ幸せ？」



男が突然そんなことを言い出した。



？「上りが天国ならぁ下りは地獄かなぁ。いや待てよ？上が未来なら、下は過去か。じゃあ今はここだ！」



わけの分からないことを言う男は突然非常停止ボタンを迷いもなく押した。



それに反応したエレベーターはどこの階に着くわけでもなくその場で止まった。



足元以外の照明が落ちる。



尊氏「何をするんですか」



？「世の中には、エレベーターで下りるみたいに簡単に過去に戻れる人間がいるって、知ってる？そんなことができたら便利だよねー」



男は僕の質問に答える様子もなく自由に喋ってミニブロックの塊を頭より高い位置に上げ、それに向かって手を振った。

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