《トドメの接吻》 愛は誰にでも

黒い男 ページ3

２月７日



私はエイトさんからの連絡を受け並樹乗馬倶楽部に来た。



長谷部さんが死んでしまうとエイトさんに言われてからずっと頭の中はそのことでいっぱいだった。



考えれば考えるほど不安は募るばかりで、証拠もないから周りに相談することもできない。



言われた通り馬小屋に入ると既に長谷部さんとエイトさんはいた。



でも長谷部さんはぐったりしている。



その近くに真っ黒な服を着た誰かがハンマーを振り回してエイトさんを襲っている。



きっと身長や体格からして男だ。



「え・・・？」



長谷部さんが死ぬのは、この黒い人に襲われたから？



そう考えるといても立ってもいられず暴れる男を止めようと近付くと振り回されていたハンマーが運悪く私の右腕に当たった。



「いたっ・・・！」



エイト「Aさん！」



エイトさんの声が聞こえるが、言葉を返せない。



痛みに耐えながらも長谷部さんに近寄る。



「長谷部さんっしっかりして下さい！長谷部さん！」



長谷部さんは意識が朦朧としている様子で全く反応しない。



エイト「宰子！」



エイトさんの大きな声が聞こえ振り返ると、エイトさんの盾になっている女の人が襲われそうになっていた。



エイトさんは女の人を助けようと突き飛ばす。



「エイトさん！」



エイトさんが男に背を向けた隙に男はハンマーでエイトさんの頭を強く叩いた。



そのまま声を出すことなく仰向けに倒れるエイトさん。



男はこちらに向かってくる。



そのまま長谷部さんの手からテープを取って立ち去って行った。



「エイトさんっ」



力の入らない足を無理矢理動かしてエイトさんに近寄る。



「エイトさんっ、エイトさん！」



何度声を掛けてもエイトさんは反応しない。



もう泣いているせいでエイトさんを呼ぶ声も震えてしまう。



「エイトさんっ・・・」



長谷部「エイト・・・？おいっエイト！」



いつの間にか長谷部さんが元気を取り戻していた。



長谷部さんの大声に。突き飛ばされた衝撃で気を失っていた宰子さんも目を覚ます。



宰子「どっどいて」



長谷部「君・・・誰？」



宰子さんは長谷部さんを無理矢理退かしてエイトさんに近寄る。



付けていたマスクを下げて、エイトさんにキスをした。



「えっ」



長谷部「おい・・・」



その長いキスに戸惑いを隠せない私と長谷部さん。



一度離れた宰子さんは“あれ・・・”と言いながら周りを見る。

突拍子もない予想→←助けなければ・・・

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