それは、タカラモノ 〜第四章 最愛〜

side Ki ページ37

「北山」

「へ、え・・？」

「なに他人事してんだよ、おまえもだろうが」

「え・・俺は、甘いのは・・」

「いーから、なに？それともニカの顔面ケーキが見たいって？」

「えー！ガヤ、ひどいっ！！」




そのまま、みんなで腹を抱えながら笑った
その光景は、つい数か月まで暗く沈んでいたアイツらとは、思えないほど輝いていた


結局、ケーキは横尾さんが綺麗に７等分してくれて、撮影前だというのに、俺は若干胸焼けを起こした


「あ、そろそろ時間か？」

「あー、そうそう。俺、みんなに言っておきたいことがあるんだけど」


急に真面目なトーンで話し出した藤ヶ谷に、メンバーの視線が集中する




「コイツ、俺のだから」

「え」



急に、ぐいっと引っ張られた右腕と、気づけば、藤ヶ谷の甘い香りと共に収まった胸の中
心臓がありえない速さで脈をうつ


「え・・・え、え、おい！！藤ヶ谷、お前何言ってんだ！！」

「おーラブラブぅ！！」

「いいなーちゃん玉〜俺達もー」

「宮田、うるせぇ」

「ね、ね！ニカーついに藤北くっついた！！」

「もー、太輔、時間ないんだから、爆弾落とすな！早く、スタジオ移動！！！」




まだ、がやがやと煩い弟たちと、それを急かす母の顔の横尾さん


この日常が・・俺は好きだ

この風景が…俺の居場所だから



すまし顔で俺の横を歩く端正な顔
上目で少しだけ睨みつけると、藤ヶ谷は満足そうに俺を見下ろして、口角を上げていた



「だって・・本当のことだろ？」

「・・バカ」



メンバーの笑顔を、一番後ろから見守りながら、俺もその後に続く

その景色が、いつだって俺の心を温かくさせる

何度転んで、つまずいても、何度でもたちがれるんだ


だから…これからもずっと、このまま、
コイツらと、同じ景色を見ていたい

「北山…」


ふいに、振り返って差し出された藤ヶ谷の右手
優しく微笑んだ藤ヶ谷の表情を見つめて、俺も同じようにうなずく

その、柔らかな手に、そっと手を合わせて、歩き出した


あぁ・・もう何があっても・・もうくじけらんねぇな




俺の隣にいるのは、最愛の人と、大切な仲間達


その、タカラモノを、

これからもずっとそばで・・守っていけるように


俺たちはまた、歩き出した








END

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