それは、タカラモノ 〜第四章 最愛〜

side F ページ16

恐怖や、葛藤にどれだけ押しつぶされそうになって今までいたんだろう

切なく、俺を求めてきた北山の気持ちを考えると、あの、悪夢の日の様に・・
いや、もしかしたらあの日よりももっと

俺の心は張り裂けそうになる


『っく、あっ、や、めろっ…あぁっ！っ…』

『藤ヶ谷、ふじが、ゃ、あっ！！』


俺の目の前で、ボロボロに傷つきながら、耐えるように、声を噛み殺していた北山の姿

まぶたの裏の光景を忘れるように目を伏せた






俺の下で、ゆっくりと目を伏せた北山の頬に、ふれるだけのキスを落とす


優しく抱きたいだなんて、


そんなキザなセリフ、今までどんな相手にだって、言ったことはなかったかもしれない


でも、今目の前の壊れそうな北山の目を見ると、ただただ、大事にしたいと、

そう強く思った



「ンっ・・・」


ゆっくりと、唇を合わせて、口内を舌先でなぞると、北山が吐息を漏らした

少しだけ、冷えた唇を温めるように、優しく啄む

ゆっくりと俺の背中に回された小さな手をとって、首筋に巻き付けた



「きたやま・・こっち見て・・」


大きな瞳が、俺を見上げる


「好き・・好きだよ・・・」


言葉にすると、北山の目がさらに○んだのがわかって、頬に添えていた手で北山の顔を挟んで、もう一度深く口づけた

優しくしたいと思う反面
目の前にいる愛おしい存在に、理性を押しつぶされそうになる

あんなことが起きるまでは・・ずっとずっと、真っすぐにこの日を待っていた



北山の口内を侵食するように深く吸い上げると、遠慮がちに舌を絡めてくる

その、姿に、容易く体の中心が熱くなっていく


「ん、はぁ・・」


口端から、零れ落ちていく唾液を絡めとるようにして飲み干した


ぎゅっと首に絡みついたまま離れない北山の腕を、優しく解く



「ちょっとだけ待ってな・・」


着ていたパーカーとシャツを脱ぎ捨てて、北山と素肌を合わせた


「ん・・藤ヶ谷、あったかい・・」


そういって、気持ちよさそうに、目を細めた北山の頭をなでると、嬉しそうにはにかんだ

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