それは、タカラモノ 〜第三章 幻影〜

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この短期間で、いったい何度病院の待合室に足を運んだのか
腕に巻かれた包帯の白を見つめながら、ずっとついたままの、手術室の赤いランプを見上げた

救急車の中で、太輔は俺の呼びかけに一度も目を開けなった

血が、いっぱい出ていて・・

素人の俺の目から見ても、

すごく、すごく重症だってことが、はっきりとわかってしまって


だけど、ここで俺が泣いたら、俺が諦めたら
ミツに申し訳なくて、泣きそうな思いをぐっとこらえた

俺がもう少し早く動けていれば
神崎は、一番初めに俺に接触してきた
狙われたのも、俺が先だった

俺が・・俺がもっと・・

そうしたら、太輔は、こんな目に合わなかった・・
ミツも、あんなに苦しまなくて・・

悔やんでも仕方ないのに、後悔の念しか出てこない
俺はいつも・・あの二人を守ってやれない・・

悔しくて、包帯の巻かれた左腕をがんッと待合室のベンチに打ち付けた
ジンジンと痛む、傷

だけど、こんなもんじゃない・・
あの二人の痛みは・・こんなはずじゃ



「横尾さんっ！！」

宮田が、抱えるように裕太を連れて、こちらに向かってくるのが見えた

「がやさんは？キタミツは？！」

必死で、俺のほうを見る宮田と、すでに泣きはらした顔の裕太

「・・わかんない・・まだ、手術中で・・」

「そんな・・」

「ミツは・・おそらく、太輔よりは、ケガしてなかった・・と思う」

「がやさん・・・」

俺の言葉に、すすり泣く裕太を、宮田が優しく抱きしめた

「横尾さんは、手、平気なの？」

「俺のなんか・・全然大したことない・・」

宮田が、包帯がまかれた俺の左手と、肩の傷を見た

「あ・・」

裕太が、短く声を上げた瞬間、ブルーの上下の男性が、こちらに近づいてくるのが見えた


「藤ヶ谷さんの関係者の方ですよね？」

「はい・・」

医師と思わしきその男性が、俺達三人の顔を窺った

「今、手術は終わりまして」

「が、がやさんはどうなんですか？！」

「非常に・・危険な状態でしたが・・なんとか、一命をとりとめました」


その、一言を聞いた瞬間

「・・がやぁあ・・」

裕太が、地面に崩れるようにしてうずくまった

「肺に、損傷が見られましたが・・無事手術が成功しましたので・・このままICUで様子を見させていただきます」

その言葉を聞いた時に、頬に温かい水滴が伝っていくのがはっきりとわかった

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