それは、タカラモノ 〜第三章 幻影〜

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ミツと、がやさんと、ニカ・・そして横尾さんの顔を交互に見ながら、俺は必死に考えていた

早くしないと・・二人は・・
特に、がやさんが危ない

もう、多分意識がない・・
背中から、いっぱい・・血が・・でてる・・

だけど・・ニカを見捨てて、そんなことできない・・



ニカは、大石さんを睨みつけると、俺のほうに視線を送ってきて、唇の動きで小さく俺に呟いた


『二人を連れて逃げろ』


俺が、それに気づいたと思ったのか、ニカは小さくグッと頷いて見せた

拳が、冷たく震えていく

無理だ・・
無理だよ・・・


ミツも、がやさんも大切だよ・・
早く助けたい

だけど・・ニカを置いて、ここから逃げるなんて・・俺には、できない


ニカが、笑った顔がよぎる
いつも、ふざけて、バカなことばかりしていた俺達だけど、ニカいつだって真剣で、誰よりメンバー思いで・・

『お前ら、うるせぇ！静かにしろよっ！』

『二人ともー、はい、やるよー』

ミツと・・がやさんの・・俺たちを見る目はいつだって優しかった

お兄ちゃんのように、厳しく、時に優しく
いつだって俺たちに寄り添ってくれていた二人が

今、儚く消えていきそうで



ばかやろっ・・
なんで今こんな音ばかり思い出すんだよ・・

だけど俺が迷っている間にも二人は・・

火のついた線香花火が落ちて消えてしまうように、二人の命が、じりじりと生命を燃やして
儚く消えてしまいそうで・・

俺は、ただ動けずにいた



泣きそうになって、ぐっとこらえるように拳を握った瞬間、けたたましくドアが開いて、
沢山の人がなだれ込んできた


あっという間に、大柄な男たちが、神崎さんと、大石さんを、拘束して、
抵抗する二人を締め上げるようにして、押さえつけていた



「警察だ、抵抗するな！！」



低く、響く怒鳴り声と、解放されたニカの姿を確認して、俺は安堵からか、涙が溢れた


「ミツ・・がやさん・・」


動かない身体で必死に、二人に駆け寄ると、がやさんはもうすでに、意識がなかった

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