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「どうぞ、おかけください」
促されるままに、長テーブルの、椅子に腰かける
二人の医師の向かいに、横尾さんと、宮田が座った
「こんな深夜に、お疲れのところ申し訳ありませんが・・」
「いえ・・ありがとうございました」
横尾さんが、深く頭を下げた
「まず、藤ヶ谷さんですが・・」
ライトのついた、パネルにCT画像のような白黒のフィルムが張り付けられていく
「左の肺に一部損傷が見られ、出血が多いため、手術で止血と損傷の修復を行いました。呼吸の補助として現在人工呼吸器で管理のもと、ICUで状態を見ています。服薬していた毒物はヒ素系のモノでしたが、致死量に達していないため、そちらは解毒して回復を待っております。傷の回復と感染症の併発を防ぐ目的で、点滴と輸液を行っており、しばらくは入院していただくことになります。
ご本人の意識が戻られて、回復すれば、一般病棟へ移っていただくことも可能ですが・・現在は面会できません」
淡々と説明されていく言葉と、空気の重みに、みんな黙って険しい表情をしていた
「あの・・もう、大丈夫ってことですか・・」
宮田が、ぽつりとそうつぶやく
「100%大丈夫ということはあり得ません。現在できる限りを尽くし、ご本人の生命力の強さ故、一命はとりとめましたが、まだ感染症の併発の懸念などもあるため、引き続き厳重に治療にあたる所存です」
その言葉に・・
安心して緩んでいた気持ちが、ずきっと締め付けられる
「次に、北山さんですが・・」
「裂傷がひどく、縫合の処置をさせていただきました。抜糸は不必要ですので、傷の癒合が終われば、退院していただけるかと」
「え・・」
玉が、声を上げた
「れっしょう・・?ミツ・・そんな怪我してたの?」
その言葉に、俺もふとミツを思い出す
がやさんの出血がひどくて・・だけどミツは・・
「その・・直腸にかけて、裂傷の範囲が広かったので・・」
「ちょ、う?」
医師が、言いづらそうに口ごもったとたん、ガタンと大きい音がした
「に、にか?!」
隣で、パイプ椅子から転げ落ちるようになる、ニカがいて、なぜか、とても辛そうに、表情をゆがめていた
「言いづらいのですが・・北山さんは、」
「やめて!!もう・・いいから・・もう、やめて・・」
ニカの、消え入るような声を聴きながら、涙を流してうずくまる身体を、必死に支えた
その、本当の意味を、理解することが、どんなに辛い事なのか
俺はその事実から、目を背けたくなった
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ピンクピーチ(プロフ) - あこさま!いつも温かいメッセージありがとうございます!励みにさせてもらってます!!もう少しで幸せな二人編に突入するので、もう少し頑張ります^_^ (2019年11月15日 15時) (レス) id: f1b41ec3ce (このIDを非表示/違反報告)
あこ(プロフ) - こんにちは!更新されるたびに泣きながら読んでます。みんなの心の傷が癒えてふたりがしあわせな時間を早く過ごせることを願ってます。ピンクピーチさまもしんどい部分の更新大変だと思いますががんばってください!応援しております^^! (2019年11月15日 14時) (レス) id: c75777a11f (このIDを非表示/違反報告)
ピンクピーチ(プロフ) - みってぃーさん» はじめまして^_^日課にしていただけて大変光栄です!そして、温かいお言葉!こちらこそ泣きながら読ませていただきます!!これからも、更新励みますので、良ければ読んでやってください★ (2019年11月11日 18時) (レス) id: f1b41ec3ce (このIDを非表示/違反報告)
みってぃー(プロフ) - いつも更新ありがとうございます!毎日更新されているか確認するのが日課になってます。そして、更新された話をここ最近泣きながら読んでいます。作者様の作品はどれも心に刺さるものばかりで尊敬しています。大変だと思いますが更新頑張ってくださいね。 (2019年11月11日 17時) (レス) id: 4e432f1ab1 (このIDを非表示/違反報告)
ピンクピーチ(プロフ) - キスマイさん» ご愛読ありがとうございます!これからは、藤北以外のメンバーの心情も複雑に絡みながら展開していきます…また楽しんでいただけたら、嬉しいです^_^ (2019年10月27日 10時) (レス) id: f1b41ec3ce (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ピンクピーチ | 作成日時:2019年10月23日 15時