意地っ張りな君へ

side Ki ページ10

俺、ここに帰ってきてよかったのかな

半ば強引に、藤ヶ谷の家へ連れ戻されたけれど、車中も藤ヶ谷は一言も発することはなく、ただアクセルを踏み込んでいた
その横顔から、きっと怒っているだろうことは想像にたやすかったけれど、いったいどう謝ればいいのかがわからなくて、結局俺も黙りこくってしまった

怒っていても、久々の藤ヶ谷の横顔は、見つめたくなる
隣に居るだけで、藤ヶ谷の香りで胸がいっぱいになる
早く、その首筋に顔を埋めて抱きつきたいのに

冷たい、背中を見つめながらリビングへ向かう藤ヶ谷を見上げた


「藤ヶ谷・・今日は本当にごめん・・忙しい中で迷惑かけて本当に反省してる」



取り合ってもらえないかもしれないと思いながらも、合わせてもらえない藤ヶ谷の目を見て、精一杯の気持ちを伝えた
藤ヶ谷は、相変わらず無表情のまま、少しだけこちらを振りかえって俺の言葉を聞いていた


「・・ふじが」

その、冷たいオーラを放っている身体に一歩近づいた時だった


「っん！！」


突然、右腕を強くひかれたと同時に、噛みつくようなキスをされた


「ふ・・んっ！！」


後頭部に回された手に力が込められていて、顔を無理やり上に向かされる
リビングの壁に押さえつけられて、背中がドンっと鈍い音をたててぶつかった

酸素を取り込もうと、苦しくなって少し開けた口の隙間から、無理やり舌をねじ込まれた

独特のざらっとした感触 それが、強引に口内を彷徨って、歯肉をなぞった


「んっんっ！！」




苦しくて、鼻から声が抜けた

こんなの、違う いつものキスじゃない
唾液が混ざり合う音はすぐ耳元で、俺の聴覚を刺激する

いつもは、もっと優しく、窺うように俺の唇をなぞる

愛おしむようにそっと合わせるだけのキスから、徐々に熱を帯びて高まっていく、
藤ヶ谷のキスにはいつも夢中になる

チョコレートよりもとろけるように、甘く、俺の髪を撫でながら唇を食べられていく感覚が好きだ


こんな一方的な、強引なキスなんて、知らない
こんなの、藤ヶ谷じゃない

「っ・・やめろっ！！」


引きはがすように、藤ヶ谷の胸を強く押すとが、体の間に少し隙間ができただけで、びくともしない

こんな形だけのキス
この行為に愛を感じない


やり場のない感情が沸き上がってきた、その時だった
急に、合わさっていた唇が離れて、藤ヶ谷の細い身体が俺と距離を取る様に下がった

ただ黙ったままで、まっすぐ、俺を射る様に見た藤ヶ谷
先に口を開いたのは俺だった

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