side F ページ29
「っ・・なんで・・」
舞台の地方公演を終えて、数日ぶりに、自分の家へ帰ってきた
見慣れたはずの自宅なのに、足を踏み入れた瞬間、違和感に気づいた
今まで、ごく自然に馴染んでいたいくつかのモノが忽然と消えていたから
洗面所の電動歯ブラシ、ヘアワックス・・
そこに置きっぱなしにするなと文句を言うと、子供のようにはにかんで、
わりぃな〜なんて笑っていたアイツ
結局それでも、いつも棚に置きっぱなしていた、スマホのバッテリー
お前といると、ケータイ見る気になんねぇから使わないけどなっなんていって、いたずらに笑った笑顔
ひとつひとつのモノが、俺達の日常を思い出させるくせに、今ではその形すら見当たらず、俺はただ茫然と、いつもより殺風景に感じられる自室を眺めた
「えっ・・・」
ふと、リビングのテーブルのうえに置かれた、黒いカードに目を留める
それは、俺達の関係が始まった日に、俺がアイツに渡したはずのモノ
無機質な黒をそっと撫でると、その下から見慣れた、整った字が書かれた紙がはらりと落ちた
『今までありがとう』
「っ・・」
それは、まぎれもなく別れのメッセージ
ただ、その整った字を見つめた
俺達、どこで間違った?
どこで、すれ違っちゃった?
聞きたいことも、伝えたいことも山ほどあった
好きだよ
俺より少し低い位置にある、小さな耳元でそう呟くと
大きな瞳で俺を見上げて、恥ずかしそうに視線を逸らす、あの表情
屈託なく笑う、その声
俺の下で、恥ずかしそうに目を伏せるその長い睫が震える度に、理性でどうにか保っていた、抑えきれない感情
ソファに押し倒して組み敷いたときの、熱のこもった目を思い出すだけで、いつだってお前は俺の胸を締め付けた
眠りにつく前にそっと首筋に寄せた唇を、くすぐったいと照れて、顔を埋めていたあの姿
全部、まだ思い出になんてしたくなくて、俺は夢中でスマホをひっつかむと、その愛おしい名前を探した
呼び出し音だけが無機質に耳に響くけれど、
俺の求めるその声が、受話器から聞こえることはなくて、
ただの金属となったスマホは俺たちのことを繋いではくれない
「くっそっ・・・!」
思い切りスマホを投げつけると、ベッドのスプリングに跳ね返ったそれが、
窓を掠めて床に落ちた
気づけば、俺達がすれ違ってしまった、あの日の様に、冷たい雨がただ窓の外を濡らしていた
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ピンクピーチ(プロフ) - まほままさん» ありがとうございます!ハピエンありきの拗れ・・ダイスキデス(//∇//)FKの葛藤と、これから、お楽しみください! (2019年8月29日 9時) (レス) id: ef49e46d66 (このIDを非表示/違反報告)
まほまま(プロフ) - こんばんは、お邪魔致します。かく言う私もすんなりより拗らせ系すれ違い系大好物です。もちろんラストはハピエンが良いです(*´艸`)!これからも更新楽しみにお待ちしていますね。 (2019年8月28日 22時) (レス) id: 7707bec53f (このIDを非表示/違反報告)
ピンクピーチ(プロフ) - ゆうりんさん» お仲間がいて嬉しいです(・∀・)こじらせ→ハピエン→いちゃいちゃが大好きなドS作者ですが、更新お楽しみいただけると嬉しいです^_^ (2019年8月26日 19時) (レス) id: f1b41ec3ce (このIDを非表示/違反報告)
ゆうりん(プロフ) - すんなりハッピーエンドにならないのが好きな私もこじらせ系です(笑)でも今はかなり悲しい苦しい場面ですね……これがあってこそのハピエンだと思いながらも辛いですね〜。藤ヶ谷さん早めにみっくんに会ってあげて〜と祈りながら、次回を待ってます! (2019年8月26日 19時) (レス) id: 94839fccd9 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ピンクピーチ | 作成日時:2019年8月20日 13時