意地っ張りな君へ

side Ki ページ18

「北山さん？」


車に乗るなり、うつむいて、頭の中をマイナスな感情が駆け巡っていた俺に、マネが心配そうに声をかけた


「あ・・すいません、ちょっと考え事・・何でもないんで気にしないでください」


無理やり笑顔を作ってみせる


「いや、いいんですけど・・体調悪いのなら無理しないでくださいね？あと、これ・・今日の終わり、もしかしたら迎え僕じゃないかもしれないんで、今のうちに渡しておきますね」



マネが、運転席から大きな紙袋を差し出してきた


「え？なにこれ？」


「ここに迎えに来る前、藤ヶ谷さん乗せたんですけどね、彼から、しばらく北山さんに会わないから、この忘れ物渡しておいてほしいって」


マネの言葉に、一瞬目を見開いた


紙袋の中をのぞくと、俺が昨日着ていた、お気に入りのジャケットが入っていた
取り出すと、ふんわりと藤ヶ谷が愛用している柔軟剤の香りが漂う

紙袋の中には、俺が藤ヶ谷の家に置きっぱなしにしていた、Tシャツやズボンなんかもいくつか入っていた



「これ・・藤ヶ谷が？」

「そうです、なんか早めに渡してほしそうだったので、お荷物になって申し訳ないですけど、今お渡ししますね」



藤ヶ谷が・・


ぎゅっと、ジャケットを握りしめると、再び柔軟剤の香りが香ってきて、まるで藤ヶ谷がいるようなキモチになって、
俺はぐっと唇をかみしめた



このジャケットは、俺がつい昨日の夜まで着ていたはずのものだった

それが、半日経った今、もうすでに俺の手元にある

少し前に購入した、お気に入りのジャケット

藤ヶ谷の家で一緒に雑誌を見ていた時、こういうの北山に似合いそうって言われて、
たまたまその後に街をぶらついていた時、似たようなデザインを見つけたから、藤ヶ谷に喜んでもらえるかもと思って衝動買いした一枚だった


よく似合うっていって、藤ヶ谷が優しく微笑んでくれたから、最近はこればっか着てた





昨日の深夜、俺が出て行ったあと、わざわざ洗濯して、マネに渡してたんだ

俺が藤ヶ谷の家に置いていた荷物のほとんどが、俺の手元に帰ってきた

これが意味することがどういうことなのか・・さすがの俺でもわかる




もう、藤ヶ谷の家に、勝手に帰ってくるなというつもりなのだろう
だから、さっさと俺の荷物を渡してきたんだろう

しかも、マネ経由で


そんなに・・愛想突かされた？もう会いたくないってことかよ

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