Ki 3 ページ8
「随分な打ち合わせだな」
静まり帰った楽屋に響いた低音に、ぼんやりする思考で目線だけ向けると、いるはずのない見慣れたシルエットが、ドアにもたれかかる様にして、こちらを見つめていた
「なんで・・・」
「・・」
無言で、こちらのほうへゆっくり近づいてくる細い身体
かぶっていた黒いハットを取ると、その鋭い視線に捕らえられた
熱に侵された身体は、バクバクと心臓が口から飛び出しそうなほど火照っていて、呼吸をすることさえ辛い
「はっ…あっ…はぁっ…」
うまく酸素が吸えず、息があがる
「ふ・・じがや」
痛む喉から絞り出すようにその名前を呼ぶと、藤ヶ谷は持っていたビニール袋をテーブルの上に置いた
「ポカリとゼリー、あと冷えピタ」
ぶっきら棒に言いながら、次々とそれらをテーブルに並べていく
床についたままの膝、ソファにもたれた身体を動かすことすら辛くて、忙しなく動くその背中を、ぼんやりする頭でただ見つめていた
急に、藤ヶ谷の香水の香りがふっと広がって、濃くなる
視界が暗くなったと思った瞬間、背中に回された細い腕と、急に身体が浮き上がるのを感じた
「はぁっ…お、おいなんだよ!」
顔を上げると、ありえないほどの近さに藤ヶ谷の端正な顔があって、思わず叫んだ
「ずり落ちて、ソファにも戻れない奴がうるせぇよ」
冷たい言葉とは裏腹に、優しく下ろされた背中が、ソファのスプリングにゆっくりと沈む
状況が理解できずに、藤ヶ谷のほうを見つめると、自然と言葉が零れ落ちた
「はっ…はっ…ふ、じがや・・お前・・なんで・・」
横尾さんと一緒に帰ったはずだろ・・
俺が呟くと、ポカリのキャップを開けていた手をぴたりと止めて、藤ヶ谷が俺を見つめた
「むしろ、なんで?」
「はっ…え・・」
こんな近い距離に藤ヶ谷がいることが受け入れられずに、なぜか心臓がトクトクなる気がした
「お前こそ、俺が気づいてないとでも思った?」
そういった藤ヶ谷の視線が何故か、俺の心臓を一層うるさくさせるのがわかった
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ピンクピーチ(プロフ) - puuさん» ありがとうございます^_^またどこかで、二人の続きをかけたらいいなと思います!! (2019年10月14日 20時) (レス) id: f1b41ec3ce (このIDを非表示/違反報告)
puu(プロフ) - 完結?おめでとうございます!気に入ってる作品も続きを書いてほしい作品も夢の国キスですー!!私も夢の国に関しては、KさんほどじゃないけどKさん寄りの考え方なので共感しながら読んでました。すれ違っていた2人がやっと両思いになったのでぜひ!続きが読みたいです (2019年10月14日 20時) (レス) id: b36113747c (このIDを非表示/違反報告)
ピンクピーチ(プロフ) - ちさん» 投票ありがとうございました!そして早速のコメント嬉しいです(≧▽≦)皆様の反応を参考にさせていただき、もしかしたら続く…かも?(笑) (2019年10月12日 20時) (レス) id: f1b41ec3ce (このIDを非表示/違反報告)
ち(プロフ) - 実は私が投票したものが素敵な短編に仕上がっていてとても感動です(涙)予想以上の仕上がりで普通に1つの作品として読みたくなりました(*^^*)本当にありがとうございます!これからも楽しみにしてます! (2019年10月12日 20時) (レス) id: 20a7b4a7e7 (このIDを非表示/違反報告)
ピンクピーチ(プロフ) - たまももさん» ありがとうございます!!執筆します^^ (2019年9月2日 10時) (レス) id: ef49e46d66 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ピンクピーチ | 作成日時:2019年8月16日 14時