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 起床早々激しく動いたのが災いし、軽い眩暈を起こしたAは再び肘掛けに頭を投げ打った。何度か意識が覚醒した気がするが、最後の記憶の中でイリーナに引かれたことだけが辛うじて残っている。

 ぼんやりとした意識の中、頭上を打つ水の音に視界が天井から逸れた。雨足が減ったのか、外の往来の音や緩やかに雨樋を伝う滴の音が耳に馴染んで消えていく。

 緩やかな調にAが再び微睡み始めるのにそう時間はかからなかった。何か、考えなくてはならないことが、理解しなくてはならないことがある、筈なの、に。頭がうまくうごかない。瞼がおもい。




 ねむ、い。



「あ、起きたんだ浅野さん」

 意識を底に引きずり込む睡魔に抗おうと小さく唸ったAが寝返りを打つのと、家主がリビングに顔を覗かせたのは同時だった。閉じかかっていた瞼が、揺り起こされて廊下からリビングに差し込む室内灯に瞳を揺らす。完全な前後不覚から、自分の居場所を把握するまでに戻ったAは返事をしようと口を開いた。


「かる゛ま゛、く、……っ!?」

 が、飛び出た掠れ声にぎょっとして言葉半ばに息が詰まった。思わず緩慢とした動きで自分の喉を抑える彼女に、苦笑交じりのカルマの声がかかる。

「いーよ、無理に話さなくて。丸一日何も飲んでないんだし」

「ぃ、ぢにち……?」

 やや醒めつつある目が、彼の言葉に更に丸くなる。一方のカルマはといえば、些か回復の兆しを見せたクラスメイトに一息吐いて寛いでいたところだ。とはいえ、眠りっぱなしの相手に焼く世話も少なく普段の週末と大差なかったが。

 ソファまで歩み寄ったカルマは、Aの驚く様に訝しみながらも尋ねた。

「……今何曜日かわかる?」

「え゛、えと……金曜?」

 案の定、ソファの生地に髪を滑らせて首を傾げた彼女の答えは自信のないものだった。まともな会話ができる程度には体調が戻りつつあるのだろうが、この様子では殺せんせーやイリーナが訪れたことすら記憶に怪しいのかもしれない。

 それに、比較的回復しているだけであって、元々が精神的、肉体的共に不調の淵にいたのだ。現に今、カルマが僅かに間を置いて黙り込んだだけで緩慢と首を揺らしている。


「────ねえ、浅野さん」

 カルマはそれを見逃さなかった。昨日のようにもう一度、肘掛けを軋ませて手を突く。


「聞きたいことがあるんだけど」

 意識の朦朧としたタイミング。それを敢えて狙ったずるさは、自覚していた。


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(プロフ) - 星咲夜空@スマホさん» コメントありがとうございます!これから浅野さんがどうなるのか、他のキャラクターとの絡みも含めて楽しく読んでいただけるよう更新頑張りますので、気長にお待ちください!! (2022年6月26日 19時) (レス) id: 1c42528565 (このIDを非表示/違反報告)
(プロフ) - カミレさん» コメントありがとうございます!浅野さんがこれからどうなるのか、私自身決めかねている部分もありますが最後まで楽しんでいただけると幸いです……!! (2022年6月26日 18時) (レス) id: 1c42528565 (このIDを非表示/違反報告)
星咲夜空@スマホ(プロフ) - あ、浅野さんー!が、がんばれー!これ続きが気になる……どうなるのこれ…… (2022年6月1日 22時) (レス) @page21 id: 2efeb2cec1 (このIDを非表示/違反報告)
カミレ(プロフ) - 胸が痛いです。すごく、すごく、浅野さんの気持ちが痛いくらいに伝わってきます。がんばって浅野さん!! この作品本当に大好きです!丁寧な描写がすごく好きです! (2022年5月31日 9時) (レス) @page20 id: ac25ff3042 (このIDを非表示/違反報告)
(プロフ) - 猫さん» 遅れてしまってすみません、コメントありがとうございます!更新が滞っていますが楽しんでいただけると嬉しいです! (2022年4月19日 22時) (レス) id: 1c42528565 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名: | 作成日時:2022年3月22日 20時

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