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濡れて皺になったブレザーも使い物にならないからと、借りたシャツだけでなく上着まで押し付けられたAはイリーナに連れられるまま部屋を後にした。起こされた途端に家に一度戻ると促されるままの彼女がおざなりな首肯だけして従ったのは具合の悪さも相俟っていたのだろう。最低限の日用品や衣服、勉強道具を詰め込んだ鞄片手に再びAがカルマの部屋に戻った瞬間、吸い込まれるように覚束ない足取りで彼女の体はソファに投げ出された。
心なしか更に顔色の悪くなったクラスメイトにこれならわざわざ今日行かなくともよかったのに、とカルマは胸中でのみ独り言ちた。急くような殺せんせーの態度を怪訝に思っていたが、イリーナ達が席を外した後に、その理由を彼は先生から直接聞いている。
といっても、ただAの母親が家を不在にしていると確実にわかるのが今日だけだ、というだけの単純な話なのだが、随分と厳重に会わないようにしているな、というのが率直な感想だった。
「……それで？ Aに何があったのよ」
眉間に皺の僅かに寄ったAの傍らで黙り込んだままのカルマに、尋ねるべく口を開いたのはイリーナだった。変わらず甲斐甲斐しく世話を焼く殺せんせーも把握している事情は彼女と遜色ないからか、答えを待ってじいと彼を見遣る。薄黄色の月に浮かぶ黒点に嘘はつけそうにないと観念したカルマは、自分の把握している中で確実なのだろうということ──Aの本当の家族、について簡潔に話を進めた。
「俺も何が正しいのか自身があるわけじゃないけど、浅野さんのホントの家族の反応的にはこれは絶対だと思うんだよね
俺が自身を持って伝えられるのはそれくらいだし、他にも何かあるなら本人に聞くしかないんじゃない？」
「…………本当にそれだけなのかしら」
殺せんせーが朝食にと買ってきたパンに手をつけながら答えたカルマに、懐疑的なイリーナの言葉が返される。
「それだけって？」
「Aがそんなことでまともに動けなくなるまで憔悴するとは思えないんだけど？」
つかつかとフローリングを踏みしめて、Aの寝るソファの背もたれに手をついた。整えられた指先を布地に沈ませるイリーナの瞳はどことなく確信めいている。
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窓(プロフ) - 星咲夜空@スマホさん» コメントありがとうございます！これから浅野さんがどうなるのか、他のキャラクターとの絡みも含めて楽しく読んでいただけるよう更新頑張りますので、気長にお待ちください！！ (2022年6月26日 19時) (
レス) id: 1c42528565 (このIDを非表示/違反報告)
窓(プロフ) - カミレさん» コメントありがとうございます！浅野さんがこれからどうなるのか、私自身決めかねている部分もありますが最後まで楽しんでいただけると幸いです……！！ (2022年6月26日 18時) (レス) id: 1c42528565 (このIDを非表示/違反報告)
星咲夜空@スマホ(プロフ) - あ、浅野さんー！が、がんばれー！これ続きが気になる……どうなるのこれ…… (2022年6月1日 22時) (レス) @page21 id: 2efeb2cec1 (このIDを非表示/違反報告)
カミレ(プロフ) - 胸が痛いです。すごく、すごく、浅野さんの気持ちが痛いくらいに伝わってきます。がんばって浅野さん！！ この作品本当に大好きです！丁寧な描写がすごく好きです！ (2022年5月31日 9時) (レス) @page20 id: ac25ff3042 (このIDを非表示/違反報告)
窓(プロフ) - 猫さん» 遅れてしまってすみません、コメントありがとうございます！更新が滞っていますが楽しんでいただけると嬉しいです！ (2022年4月19日 22時) (レス) id: 1c42528565 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：窓 | 作成日時：2022年3月22日 20時
