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話は数分前に遡る。
「俺が言うのも変な話なのかもしれないけどさ、……浅野クンそれ本気で言ってんの」
「……理事長とAの母親が決めたことだ」
「浅野クンも相当参ってるんだろうけどさあ、」
三人とも浅野さんと暫く会わないってどういうつもり? カルマが続けた言葉が全てだった。たった今、学秀はAと彼、頼子、そして學峯まで会わせない方がいいと言ったのだ。
怪訝な声色を返すカルマに、電話越しの声が途切れ途切れに言葉を紡ぐ。
Aが帰宅しているところに二人の会話を偶然聞いてしまったこと、両親が実の親ではないことともう一つ、カルマはまだ知らない父親のこと、その場にいなかった学秀は直後に學峯からその経緯を聞いたこと。それを踏まえてショックの大きいであろう彼女が落ち着く為にも、今は一人で考える時間が必要だと學峯に言われたこと。
Aの普段とかけ離れた姿を見れば間違いではない対応なのだろう、学秀からことの経緯を粗方聞いてカルマの抱いた感想はそれだった。実際、Aが帰りたくないと言っているのだし彼女の希望が叶えられるわけだが、彼が気にかけたのはその
「……それはわかったけど、浅野さん家に帰れないじゃん、どうするの?
何なら俺がこのまま預かっててもいいけど浅野クン的には嫌なんでしょ」
「そっ……」
溜息交じりのカルマの言葉に、そんなことは、と学秀は否定しかけた声を飲み込んだ。何度目かの沈黙に外の土砂降りが耳を占める。詰まった声を最後に黙り込んだ学秀が、雨音を遮って声を張ったのはそれから経たずしてのことだった。
「…………いや、そうだな。Aを一人にさせるよりまだ事情を知っている君の近くにいた方がいいのかもしれな、い」
「は、」
「理事長には僕から伝えておこう」
「ちょ、」
「連絡はまたするかもしれないが、なるべくそれは赤羽が持っていてくれ」
それ、といわれたのがたった今通話をしているAの端末だというのはすぐに理解したが、自分の口車に易々と乗るのは想定外だった。
「浅野クンあのさ……大丈夫?」
「…………さあ、どうだろうな」
自棄になっているような返答に転げ落ちた不躾すぎる物言いにも憂いを帯びた返事をしたきりだ。カルマと学秀の通話はそこで切り上げられた。
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窓(プロフ) - 星咲夜空@スマホさん» コメントありがとうございます!これから浅野さんがどうなるのか、他のキャラクターとの絡みも含めて楽しく読んでいただけるよう更新頑張りますので、気長にお待ちください!! (2022年6月26日 19時) (レス) id: 1c42528565 (このIDを非表示/違反報告)
窓(プロフ) - カミレさん» コメントありがとうございます!浅野さんがこれからどうなるのか、私自身決めかねている部分もありますが最後まで楽しんでいただけると幸いです……!! (2022年6月26日 18時) (レス) id: 1c42528565 (このIDを非表示/違反報告)
星咲夜空@スマホ(プロフ) - あ、浅野さんー!が、がんばれー!これ続きが気になる……どうなるのこれ…… (2022年6月1日 22時) (レス) @page21 id: 2efeb2cec1 (このIDを非表示/違反報告)
カミレ(プロフ) - 胸が痛いです。すごく、すごく、浅野さんの気持ちが痛いくらいに伝わってきます。がんばって浅野さん!! この作品本当に大好きです!丁寧な描写がすごく好きです! (2022年5月31日 9時) (レス) @page20 id: ac25ff3042 (このIDを非表示/違反報告)
窓(プロフ) - 猫さん» 遅れてしまってすみません、コメントありがとうございます!更新が滞っていますが楽しんでいただけると嬉しいです! (2022年4月19日 22時) (レス) id: 1c42528565 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:窓 | 作成日時:2022年3月22日 20時