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 学秀の言っていた、Aから何か聞いたかというのはこの話なのだろうとはすぐに予想がついた。家族と血が繋がっていなかったなど、余程懇意にしていなければ話せない内容だ。特に彼からすれば、カルマに聞かれてしまっているなど耐え難いのだろう。

「Aは話してたんだな」

 何故よりによって赤羽に……と続けた学秀に、一瞬眉間に浅い皺が刻まれるが、それよりも気になったことがあったカルマは学秀の独り言の後に更に続けた。半信半疑だったものが確信に変わった、次に尋ねるは何も確証のないことだ。



「どこで誰と何の話をしてたか俺は知らないけど、浅野さんが家に帰りたくないって言い出したのはそれだけが原因なの?」

「父親のことは何も言っていないのか、Aは」

「父親?」

「っ、何でもない。知らないなら君には関係のないことだ」

 鸚鵡返しに素っ頓狂な声を上げたカルマに、僅かに息を詰まらせた学秀がすぐさま言葉を返した。自分を弾き出すような返事に端末を握り込んでいた指に力が籠もる。急いている声色は、自分から掘り出した話題を早く切り上げたがっているように聞こえた。

 取り乱していたAの様子に彼女を殴りつけたものが他にあるのではないかと、片隅に留めていたカルマの仮説が真実味を帯び始めた。父親、とわざわざ限定して言ったのだから血縁の話とは別件なのだろうと予想がつく。

 しかし、電波の先の相手でこれ以上言及しても答えない頑固者だというのはわかっていた。

「ふーん……そんな言い方で俺が簡単に諦めると思ってんの?」

 意地の悪い言葉を吐いた自覚はある。そうでもしなければ、引き下がれば本当に何も知らされないまま浅野家の中で何かが帰結してしまうと確信があったからだ。


 返事はなかった。端末に当てられていない耳が勢いの落ち着き始めた雨を微かに拾う。

 震える息が僅かに電波に乗っている。学秀がひどく堪えているのは明白だった。



 彼をそこまで強情に動かしているのか、怒りかそれとも、




「──────頼む」


 出方を待ちかねて口を開きかけたカルマの耳に、殊勝な声が飛び込んだ。


「Aは今ひどく混乱している筈だ。不用意に聞き出して、これ以上余計な刺激を与えたら壊れてしまうかもしれない。だから……っ」


 健気な、そして悲壮感すらある訴えだった。皮肉にも湿度の上がった部屋がお似合いといえる程の。外でコンクリートを叩く雨音がまた、激しくなり出した。



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(プロフ) - 星咲夜空@スマホさん» コメントありがとうございます!これから浅野さんがどうなるのか、他のキャラクターとの絡みも含めて楽しく読んでいただけるよう更新頑張りますので、気長にお待ちください!! (2022年6月26日 19時) (レス) id: 1c42528565 (このIDを非表示/違反報告)
(プロフ) - カミレさん» コメントありがとうございます!浅野さんがこれからどうなるのか、私自身決めかねている部分もありますが最後まで楽しんでいただけると幸いです……!! (2022年6月26日 18時) (レス) id: 1c42528565 (このIDを非表示/違反報告)
星咲夜空@スマホ(プロフ) - あ、浅野さんー!が、がんばれー!これ続きが気になる……どうなるのこれ…… (2022年6月1日 22時) (レス) @page21 id: 2efeb2cec1 (このIDを非表示/違反報告)
カミレ(プロフ) - 胸が痛いです。すごく、すごく、浅野さんの気持ちが痛いくらいに伝わってきます。がんばって浅野さん!! この作品本当に大好きです!丁寧な描写がすごく好きです! (2022年5月31日 9時) (レス) @page20 id: ac25ff3042 (このIDを非表示/違反報告)
(プロフ) - 猫さん» 遅れてしまってすみません、コメントありがとうございます!更新が滞っていますが楽しんでいただけると嬉しいです! (2022年4月19日 22時) (レス) id: 1c42528565 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名: | 作成日時:2022年3月22日 20時

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