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「……カルマ君、」
呼んだ筈の声は、嗄れていたのも相俟って土砂降りの雑音の中に消えていく。
「てか、何でそんなびしょびしょで……」
「このままだと風邪引いちゃうよ浅野さん!」
雨の薄暗い中でも目立つ真っ赤な髪を携えたクラスメイトの背後から、これまた曇天の似つかわしくない淡い水色の髪が彼──カルマの隣に並んだ。大きめの傘をさしていた渚が率先してAを雨宿りさせようと傘を傾けると、瞬いた瞳が二人にピントを合わせる。
「……二人とも、どしたの」
きょとんと目を丸めるクラスメイトのいつになく幼い物言いに、カルマと渚は顔を見合わせた。ずぶ濡れの時点で様子がおかしいのは勿論、雨で冷えたのか彼女の顔色は青ざめるのを通り越して真っ白だ。
どうしたも何も、つるむことの多い二人は放課後に遊んでから、
「どうしたのって……むしろこっちが聞きたいんだけど」
「……私……? 私、は……
あは」
尻すぼみになる言葉に伴ってゆるゆると目を伏せかけた少女の口から漏れ出た笑い声に、カルマと渚が肩をびく、と竦めた。恐る恐る隣の渚がAを見上げると同時に、彼女は朗らかな笑みを浮かべる。
「聞いてよ、二人とも! 私と学秀君ってほんとにきょうだいだったんだって!」
「は、」
「もうずっとさぁ、言われてきてでも違うって思ってたし言ってたんだよ? 急にそんな話されたからびっくりしちゃって」
「あ、浅野さ」
「じゃあうちと理事長とどっちが家族なんだろうって考えたんだけど、別に考えるまでもなかったんだよね」
ひどく愉快そうにからからと笑うAの声色に、自嘲が滲み出る。カルマが、次いで渚が、壊れたようにまくし立てるクラスメイトに声をかけるも彼女が止まる様子はない。
「だ、って、だってさあ!!!」
雨にかき消される中で、自棄になった声が響いた。一息に話したからか、それ以外の理由か、徐々に急く呼吸の間隔がは、と短くなる。
「私と学秀君が似てるんじゃないの、
私達、学秀君のお母さんとすごく、似てるの」
眉根に皺を刻んだ笑みの中Aが思い出していたのは、
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窓(プロフ) - 星咲夜空@スマホさん» コメントありがとうございます!これから浅野さんがどうなるのか、他のキャラクターとの絡みも含めて楽しく読んでいただけるよう更新頑張りますので、気長にお待ちください!! (2022年6月26日 19時) (レス) id: 1c42528565 (このIDを非表示/違反報告)
窓(プロフ) - カミレさん» コメントありがとうございます!浅野さんがこれからどうなるのか、私自身決めかねている部分もありますが最後まで楽しんでいただけると幸いです……!! (2022年6月26日 18時) (レス) id: 1c42528565 (このIDを非表示/違反報告)
星咲夜空@スマホ(プロフ) - あ、浅野さんー!が、がんばれー!これ続きが気になる……どうなるのこれ…… (2022年6月1日 22時) (レス) @page21 id: 2efeb2cec1 (このIDを非表示/違反報告)
カミレ(プロフ) - 胸が痛いです。すごく、すごく、浅野さんの気持ちが痛いくらいに伝わってきます。がんばって浅野さん!! この作品本当に大好きです!丁寧な描写がすごく好きです! (2022年5月31日 9時) (レス) @page20 id: ac25ff3042 (このIDを非表示/違反報告)
窓(プロフ) - 猫さん» 遅れてしまってすみません、コメントありがとうございます!更新が滞っていますが楽しんでいただけると嬉しいです! (2022年4月19日 22時) (レス) id: 1c42528565 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:窓 | 作成日時:2022年3月22日 20時