俺、あいつんとこに泊めてもらえるみたいです。

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Ki side



｢な、何してんの！！｣

｢何してんのはこっちのセリフだ！！｣


俺を突き飛ばした後、布団を頭からかぶって部屋の隅っこまで逃げた藤ヶ谷。そして “ ありえない ” というような目で俺を睨みつけてくる。

いや、被害者俺ね？


｢一緒に寝るだけって言ったじゃん！｣

｢俺だって一緒に寝るだけのつもりだったわ！｣

｢なんで北山が俺の腕の中にいるんだよ！｣

｢それはお前が俺のこと抱きしめて離してくれなかったからじゃねえか！｣

｢…え？俺が…？｣


とてつもない勘違いをしているであろう藤ヶ谷に、俺が目を覚ましてから何があったのかを事細かに説明してやった。

すると藤ヶ谷は、“ 最悪ー ” と呟きながらも、何かに納得したようだった。


｢ったく、これから仕事だってのにもう疲れたわ。｣

｢まぁ、仕方ないよね。｣

｢仕方なくねえだろ！｣

｢もう、そんな時間ないから早く出よ。｣


朝から大変な騒動のために時間を使ってしまい、家を出なければならない時間が迫っていた。

俺は自分の部屋に戻って私服に着替える。廊下に出るとマスクに大きめの眼鏡をかけた藤ヶ谷とばったり会った。


｢早く出ないと遅れるよ。｣

｢あー、タクシー捕まえなきゃだわ。｣

｢え？タクシーで行くの？｣

｢だって俺車持ってねえもん。｣

｢は？乗せてくし。｣

｢え？あ、どうも？｣

｢ほら、早くして置いてくよ。｣


車出してるから。

そう言って俺より早く家を出る藤ヶ谷の背中を見つめる。今まで未知だった藤ヶ谷のプライベート。なのに昨日今日でここまで近い距離に来てしまった。なんだかいけない事をしている気分…って、そんなことどうでもいいんだ！

｢やっべ置いてかれるっ…｣


それより今は仕事仕事。

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