一瞬を取り消して/ky ページ35
※キヨさんがピアスしてる設定です
今日は高校生最後の日だった。卒業式が終わった今でも卒業したという実感はあまり無く、私は1人空き教室からグラウンドを眺めていた。この行動に意味がある訳ではないが、なんとなくこの景色を見れるのも最後だと思うと気づけばここまで来ていた。それに、この空き教室は＿＿
｢A｣
｢……何、キヨ｣
この空き教室は、目の前でヘラヘラしているこの男との出会いの場所でもある。
同級生の中でも一際目立つ明るい茶髪頭。片耳に1個ずつ光るピアス。着崩した制服、と見た目は派手で中身もうるさかったりする。それでも私の彼氏だ。
｢3年間ってあっという間だな｣
「そうだね」
耳たぶに指先の感触がして、キヨをじっと見つめた。
「開けないの？ピアス。卒業したら開けるって言ってたじゃん」
「ああー……もう少し先でもいいかな、って」
「何、怖いの？」
耳たぶをきゅっと押されて思わずビクリとする。
ピアスを開けるのが怖くない、と言えば嘘になってしまう。付き合った頃からキヨの耳にはシンプルなシルバーのピアスがついていた。少しだけそれに憧れた私は「じゃあ卒業したら開ければいいじゃん」とキヨに言われた。
「一瞬だよ。俺が開けようか？」
ポケットからまだ使われていない新品のピアッサーを出しながらそう言った。
「……なんで持ってるの」
「もう1個開けようと思って買ったけど使ってなかったから。Aにあげる」
此方の言い分には耳を貸さず、キヨはピアッサーを取り出す。
先程同様耳たぶに細い指で触れられて、いつでももう穴を開ける準備は出来てしまった。
「開けるって言ってないけど」
「心配しなくても大丈夫だよ」
「……分かった。じゃあもう開けていいよ」
「ほんと？」
キヨの手に少し力が加わって、私は目を瞑った。
ずっと耳に集中をしていたが、気付けば唇と唇が重なっていた。
理解が出来ずにわずか0.1秒、唇に気を取られていると耳たぶにチクリと痛みが走った。
「意味分かんないんだけど……」
「一瞬の痛みだけど、取り消してあげた」
「痛くなかったでしょ」と言いながら笑うキヨを見て、私は耳たぶのファーストピアスをそっと触った。
終わり
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蘭(プロフ) - なめこさん» そう言ってもらえてとても嬉しいです。これからもキュンキュンするお話頑張って書きます！ (2020年1月8日 6時) (
レス) id: c4a54b0710 (このIDを非表示/違反報告)
なめこ - めっちゃキュンキュンしました！ (2020年1月7日 21時) (レス) id: 136e05d453 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：蘭 | 作成日時：2019年11月30日 10時
