終わりまでのカウントダウン【灰谷蘭】 (ページ11)

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11日目ページ11

先輩のお家は先輩が詰まってた。

小さい頃撮られたであろう全体が金髪でお下げにしてる先輩とその隣にいる少し不貞腐れた顔をしている多分弟さん？の写真。
先輩からいつも香る香水。

「今日ご飯食ってく〜？」

『え、いいんですか？』

「竜胆…あ、弟な？

弟が作り置きしたカレーでいいなら」

『先輩の弟さんの…！

ぜひ食べていきたいです！』

「ははっ、りょーかい」

先輩の事をどんどんしれていくことが嬉しくて浮かれてたんだ。
先輩の匂いがする家、弟さんのことを話す先輩の表情、ソファに座って頬杖をつきながら映画を見る姿。
普段知れないことを知れて、もっと知りたいと願ってしまった。

『先輩…私、もっと先輩の事知りたいです』

「んー、嬉しいけど…」

その言葉の続きは聞けなかった。
でも、聞かなくても分かった。
一線を引かれたんだってことに。

あーあ、せっかく縮んだ距離が一気に離れた気がした。

『あっ、ちょっとお手洗い…借りますね』

「そこ、出て左行ったとこ」

『はい』

パタンと扉を閉めた。
せっかくのお家デートなのに失敗した事が悔しくて…くしゃっと前髪を掴んだ。
壁に寄りかかってしばらく落ち着こうとすればカチャリと開く玄関。

「え…？」

『あ、お…お邪魔してます』

「あ、はい」

多分先輩の弟さんだと思う。
今日帰ってこないんじゃなかったの…？

「あ、忘れ物取りに来ただけなんで」

『あ、いえ…』

なんだか気持ちを見透かされてて恥ずかしい。
私先輩にもそんな簡単にバレてるのかな。

「兄ちゃ……兄貴は、やめた方がいいよ」

『へ？』

「あ、いや…」

「なーにしてんの、竜胆」

ひょこっと扉から顔を出した蘭先輩。
なんだかその顔は少し怖かった。

「にぃ……兄貴。

なんでもないよ、すぐ出るから」

弟さんはそのまま横を通り過ぎて行った。

「…竜胆に何か言われた？」

"兄貴は、やめた方がいいよ"

『んーん！何も言われてないです』

振り返って微笑んだ。

『早く戻りましょ』

「ねぇ、ゲームしよ？」

『え、したいです！』

「きーまり♡」

心のモヤモヤは知らないフリをして、リビングへ戻った。
初めて先輩から断られた。
どうやって距離を詰めたらいいのか一瞬で分からなくなった。

私、まだ先輩に振り向いて貰えないんだね。