紅一点、君は百点、僕らは満点 ３

Y.H ページ28

、


紅一点の様子がおかしい。

衣装のタートルネックで隠れる首を
ずっと触っている。

陸さんと壱馬に話しかけられると
ふらっと翔平の後ろに隠れる。


やましょーさんと翔平と控え室に戻ってくると何か考えてるのかボーッとしている。




「Aどうしたー？」

「・・・・」

翔平が聞いても何も答えない。
無言を貫く。

今日俺が聞いた言葉は、おはようございますだけ。




「Aさん、武知さん、鈴木さん！
こちらにスタンバイお願いしまーす」

「Aいける？」

「ん」

翔平の問いかけに小さく頷くA




「Aさん！今日の衣装可愛いですね！」

「…ほんと？」

元気のないAに昂秀が大きく頷く。


「うん、可愛い」

海青もAにそう言って頭を撫でる。


「へへへ」

顔をくしゃっとさせて嬉しそうに笑えば
もうAはいつも通りで


カメラの前でポーズを次々に決めて
２人の真ん中に立ち腕を組む。


「はーい、オッケー！」

「昂秀くん、海青くん、ありがとう！」

Aは嬉しげに２人と腕を組んだまま離れようとしない。



「A、インタビュー次だから離して」

「やだ！」


「Aさーん俺もゲームが」

「やだ！」

頑なに２人から離れないA




「A、こっち来たら？」

「やだ」

断られる壱馬。


「２人が困るやろ？」

「……ほくちゃんといる」


Aは俺の隣に来て小さな体をさらに小さくして座る。



「いい？ほくちゃん」

「うん、いいよ」

海青と昂秀は俺に謝ってその場を去っていく。

残されてるのは壱馬と俺と陸さん。




「Aインスタに載せる写真撮っていい？」

「うん」

ソファーで三角座りをするAは
俺のほうにそのまま顔だけ向ける。


「うん、可愛い」

「ほんと？」

「うん、ほんと。すごく可愛いよ」


体にぴったりとしたデザインの
茶色のタートルネックに
レザーのコートにロングのスカート。
そしてエンジニアブーツがよく映える。



「ほくちゃんも可愛い」

「Aには負ける」

ふふっと小さく笑うA




「A、俺とも写真…」


「ミカンがある！」


壱馬は思い当たることがないのか困ったように頭を掻く。

陸さんはボーッとAだけを見ている。


Aはミカンの皮を剥くのに真剣だ。



、

.→←.

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す