紅一点、君は百点、僕らは満点 ３

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芸能人に恋をするファンの気持ちが
一瞬わかってしまう

ほんと、掴み所のないやつ…。


「よし写真撮って！」

Aは本を袋から取り出して
本を持って顔を後ろから覗かせる。

写真を撮ってやると嬉しそうに笑う。


「あとでインスタにあげよう」

「まじかよ」

「うん！ファンのみんなに
うちのボーカルかっこいいよってお知らせ」


本を袋に入れて歩きだすA


かっこいいと言ってもらえるだけで
自信が出てくる。

自分のもとに真っ直ぐに来ないなら
俺から近寄ればいいだけのこと。



本棚を隔てて見えた
あの悪戯な顔が脳裏にちらつく。

掻き乱すのはいつも俺なのに
掻き乱されて好きになるのはいつも俺。



「壱馬くん？」

「A、あの服似合いそう」

「わー、綺麗な服」


横目にショーウィンドウから見えた
大人っぽい真っ黒のワンピース。


「ちょっと見に行こ」

「うん、行きたい！」

「Aにはまだ早いデザインかも」

からかってそう言うと少し口を尖らせるけど
すぐに笑う。



「黒って大人っぽくてセクシーだもんね」



捻ってやりたいと思った
白くて柔らかい頬がすぐそこにある。

指でなぞったあの本のタイトルが
頭によぎったが頭を振り消し去る。



お店に入り試着をさせてもらうと


「意外とあり」

「ほんと？」

真っ黒のワンピースに身を包むA



背中はリボンが編み込まれていて
そのリボンをほどいてしまいたくなる。

ふんわりとしながらも立体感のある袖に
鎖骨、デコルテが見える広いＶのデザイン。



胸を隠すほどまで伸びた髪の毛と
少しタイトなデザインが

より大人っぽさを際立たせる。



「うん、似合ってる」

「黒は１着もないしなー」

裾を翻して鏡を見るA


椅子に座り鏡越しにAを見る。

店員は何かを察してか近寄ろうとしてこない。
そうしてくれると助かるので有難い。



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