紅一点、君は百点、僕らは満点 ３

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「もー怖いお兄さんたちに
絡まれたらダメでしょ慎くん」


Aさんは笑いながら冗談めかしてそう言う。


「まさか慎くんがナンパにあってるとは」

「な、ナンパ？」

「だって佐野さんたちにご飯行こ？って」

「あー、」

「うーんやっぱり待ち合わせにナンパは付き物だね」

一人頷くAさん。


少女漫画とかでは確かにそういうの
鉄板ではありますけど

先輩に誘われたご飯をナンパとして
数えるのはどうかと…

それにナンパされるならAさんでしょ



「でも待ち合わせも面白いね」

「そうですか？」

「うん！だって待ってもらってるんだよ？
早く行かなきゃーとかお洒落しなきゃって
でも待ってるしって焦って面白かった！」


時間にきっちりしていて
遅刻を一度もしたことがないAさん

お店で合流してご飯食べよって話になっても
約束の10分前には必ずそこにいる。



「でも待ってもらうってドキドキするねー
やっぱり私は待つ方が好きだなー」


Aさんは人を待たせたりしない。

いつも待たせているのは僕で
たぶんみんながそう。

Aさんを待ったことがある人なんて
きっとランペにはいない。




「たまには待ちたいですけどね」


「えー、そんなのさせられないよ！
これでも一応は先輩だしね」


「ならなおのことです」


後輩が待つのが普通だろうし
何より、女性に待たれているのは気が重い。



「私は待つのが好きだから待ちますぅ」

Aはそう言って時計を見る。
細い黒のストラップの時計。



「それに待たせてるって思うと不安だし」

「どうしてですか…？」

「どうしてかな…取り残されてる気分にでもなるのかも」


ふふっと小さく笑って鞄の持ち手に
引っ掛けていたアウターを肩に掛ける。
それは以前おそろいで買ったアウターだ。



僕はあなたを取り残したりしない。
あなたを置いていかない。


「今日の洋服に合わせたら
ちょっとかっこよくなると思ったんだー」



あなたがいつも待ってくれるように
僕はいつだって待つ準備をして



「今日は同じアウターですね」


あなたを追いかけてるんだから。



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