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Episode27 ページ28

◇___side 朱里




「言っておくけど、別にアンタのために言ったわけじゃないから。目障りかつ耳障りな醜態で、余りにもほっておけなかっただけで、」

「……」

「だからそういう風に抱き着かれて、ベタベタされるのも、好きじゃないから」

「……」

「…聞いてる?」





身じろぎ一つしないAに、こちらが戸惑う。
―――じんわりと、襟元を温かい何かが濡らしていく感覚。見なくても分かる、それはAの涙だった。



「ああーーもう!!」

ガシガシと頭を搔けば、ピクリと反応するA。



「…今回だけ、だからね。次は二度とこんなことしないから。調子に乗らないでよ」

ぐるんと彼女に向き直り、正面からギュッと背中に腕を回す。粗い手付きで、しかし乱れないようにAの黒髪まで撫でてやるおまけつき。




自分の慈悲深さを誰か認めてほしい。何でこんな事しなくちゃならないんんだ。
制服も濡れたし。


(私の制服は、アンタの涙拭くためのハンカチじゃないっつーの)


……敢えて口には出さなかったけれど。





◆___side 万次郎


「ケンチーーン」

「お?……何だよ、マイキーかよ。何でお前ここにいんの?」

「……追っ払われた。朱里に」



激ウマたい焼き・水族館バージョンなんてものが存在するわけないことぐらい、流石に万次郎にも分かった。そこまで馬鹿ではない。


但しドラケンは、意味わからないという顔つきになって。


「……朱里に?何でだよ」

「それはたぶん、オレがAにヒドイことしようとしたから」

「!」

「朱里は優しいからさ、自分のことイジメたやつでも、ほっとけねーんだよ」



あんなことするつもりじゃなかった。嫉妬で、目の前がチカチカして。欲望と怒りに任せた行動。落ち着いて今考えれば、自らの行動の愚かさにため息が出る。


何せ、朱里にAを庇わせてしまうほどだったのだから。




「―――Aの奴、泣きそうな顔してたんだ。オレ、アイツのあんな顔初めて見た。いつも真顔だと、思ってたんだよ」

「……」

「もう許してもらえねぇよ。謝ったって、もう二度と。――あーあ、オレもう死にてぇ」



それまで黙っていたドラケンがゆっくりと口を開く。



「…何でそんな、Aのこと気にすんだ?オマエにとってアイツは、朱里をイジメた張本人なんだろ?そんな奴に嫌われようと、マイキーにとってはどうでもいいことなんじゃねーの?」

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グラニー京子 - 面白かった! (2022年4月4日 14時) (レス) @page38 id: 90faee3a30 (このIDを非表示/違反報告)
雨降り星(プロフ) - ふゆきさん» 朱里ちゃんそこまで気に入っていただけるなんて…!番外編、楽しそうなんですけどね… (2021年12月30日 23時) (レス) id: c629cc7e2d (このIDを非表示/違反報告)
雨降り星(プロフ) - わかめさん» 返信遅くなってすいません!…ええっ、ほんとですかめっちゃ嬉しいです是非是非見てみたいです!! (2021年12月30日 23時) (レス) id: c629cc7e2d (このIDを非表示/違反報告)
雨降り星(プロフ) - ももさん» ぐへへ、ほんとですか?←きも 愉快になっていただけたら嬉しいです! (2021年12月30日 23時) (レス) @page37 id: c629cc7e2d (このIDを非表示/違反報告)
ふゆき - 主人公ちゃんと朱里ちゃんの絡みが凄い好きです!番外編とかでみんなの日常編みたいなの作って欲しい… (2021年12月30日 9時) (レス) @page38 id: 0daf234829 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:雨降り星 | 作成日時:2021年9月13日 23時

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