56.わからない ページ10
虫眼鏡side
何日か前、突然Aが帰った。その理由をりょうくんは言わなかった。
としみつとてつやは心配していて、僕も心配していたけど、僕の心配はてつやたちと違うと思う。
最近のAは珍しく遅刻ばかりで、撮影開始のギリギリに来る。
突然帰ったあの日からだ。
て「おつかれ！」
と「おつかれー」
今日は連続で２本撮った後、解散。
解散っていっても、みんな大体いつもてつやの家でうだうだしてるんだけど、Aは帰るって言い出して。
また体調でも悪いのかとてつやととしみつが心配するも、なんだが今日のAは話しかけづらい。
1番変なのは、いつもAに話しかけるりょうくんが、一言も話しかけない。
言葉をかけようか迷ってるのか、口を開いては閉じて、俯く。
玄関へ向かうAを僕だけが追いかけて引き止める。
虫「A」
『虫さん……』
虫「ねぇ、みんな心配してるよ。」
『……』
虫「何があったの。」
『……』
Aは目すら合わせてくれない。
虫「ねぇ、Aってば」
むりやりAを振り向かせれば、Aは泣きそうな顔をしていて、思わずたじろぐ。
虫「……待ってて、僕も帰る。」
僕はリビングへ急いで荷物を取りに行く。
虫「ごめん！僕も先に帰るね！！！」
と「は？」
て「え！ちょ……！虫さ……！」
ごめんね。
呼び止めるてつやを無視して部屋を出た。
玄関で突っ立っているAの腕を引っ張った。
虫「送ってくから、乗りなよ。……ちょっと、寄り道して帰ろう？」
Aは黙って僕に促されるまま、車に乗った。
お互い無言のまま、車を走らせた。
しばらくして人気のない高台までやってくると、僕は車を止めた。
虫「A、何があったの。」
そう恐る恐る聞けば、しばらくまた沈黙が訪れる。
虫「……A。」
助手席に俯いたまま座るAの腕を掴んで揺すった。
突然、ぽたぽたとAが涙を流し始めた。
虫「A……」
『……ねぇ、虫さん……っ……わたし……』
泣きながら途切れ途切れに話すA。
『わたし、っ……男に生まれれば、よかったのかなぁっ……』
その一言に、Aの全てが込められてる気がして
僕は酷く胸を痛めた。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 615人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「YouTuber」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
+ちっく(プロフ) - ピアスの下りでは女は右耳、男は左耳で性別判断とも言われてますよ(･∀･)←やかましい (2019年7月8日 10時) (
レス) id: 4d74bd6de9 (このIDを非表示/違反報告)
ところてん(プロフ) - 作者様の帰りもお待ちしてます！！！小説超面白いです！！！ (2018年9月25日 1時) (レス) id: fe2831d1b4 (このIDを非表示/違反報告)
りさ(プロフ) - 更新楽しみにしてます！！ (2018年8月28日 7時) (レス) id: 2362667ffd (このIDを非表示/違反報告)
rairu0726(プロフ) - Knymal01さん» コメントありがとうございます。しばらく更新していなかったので、コメントがいただけると思っていませんでした。ゆっくりですが、また再開しようと思います...！ (2018年8月24日 18時) (レス) id: 201effe25e (このIDを非表示/違反報告)
Knymal01(プロフ) - 更新たのしみにしてます！！ (2018年8月17日 14時) (レス) id: 346c2647c9 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：らいる | 作成日時：2018年3月11日 23時
