いけない子【死柄木】 ページ8
私のスケジュールには、放課後の帰り道“ヴィランに遭遇する”なんて書いていなかった。
光の通らない路地裏にひっそり佇む男性。
その上にはマルチシートがかけられており、見えるのは青白い髪の毛と＿＿＿
＿＿＿顔面を隠すようにつけられた、大きな手。
間違いない。こいつはヴィラン連合の「死柄木弔」だ。
本能が警報を鳴らす。
通報しようとスマホを取り出そうとしたが、
今は帰宅ラッシュのため被害者が出る可能性があった。
何より私と彼の戦力差は大きすぎる。
私の個性は所詮「騙し打ち」
今使って内容がバレて仕舞えば、後々大きな反撃が来る。
使えないのが、彼を見逃すのが、苦しくてたまらない。
そう思いながら通り過ぎようとした時……
2人の男の子が「探検しよーぜ！」と言いながら、路地裏に入って行こうとした。
『だめ、待って！！！』
急いで2人の手を掴み、思いっきり光の当たる場所に連れて行く。
男の子たちはきょとんとした顔で、でも少し泣きそうだ。
『ごめんね、急に止めちゃって。
この路地裏にはよく不審者が出るからとっても危険なんだ』
「ご、ごめんなさい……」
『大丈夫！でも子供だけでの行動は危ないからね。もう暗くなるし、早く帰ったほうがいいよ』
そう諭すように説明すると、いい子の彼らは二つ返事で自身の家に戻っていった。
でも気づかれちゃったなあ。
と思いながら再び路地裏に目線を向ける。
先ほどまで下を向いていた死柄木の赤い瞳は、
こちらを刺すように向いていた。
“やってくれたな”と、そう言いたげに。
しかし引くのも余計危ないだろう。
私はずっと此処にいることにはできない。
彼が行動しないように、止める必要がある。
深呼吸をこっそりとして私は死柄木のもとに歩み寄った。
『あの、ずっとそこに居ますが……怪我してるんですか？』
焦るな。不安を悟られるな。
私はヒーローの卵、ヴィランに恐怖する必要はない。
死柄木は驚いたと言いたげに少し目を開く。
それも気にせずに私は言葉を続けた。
『あの男の子たちにも言いましたが、
此処は不審者がよく出るので……早く帰ったほうがいいですよ』
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 56人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：花氷 ベタ | 作成日時：2022年10月1日 18時
