ネバーギブアップ！【遠形】 ページ47
トガちゃんと別れた後、口からため息に似た安堵が溢れた。
私が今日触れた彼女は、人間で、ただ幼い少女。
3人に向けて買ったプレゼントが風で揺れる。
プレゼントの中には「これでまた仲良くなれる」という浅ましい欲があった。
なんとかして話す理由を作らなくては。またいつも通り話せるようになるんだ。
ずっとそう思っていたはずなのに。
今日で全て塗り替えられてしまった。
楽しくなってしまったのだ。
友達とはなんだろう。
ヒーローとヴィランは、交わってはいけない存在。
私では彼女を救えない。
これから交友を続けても、私は常に彼女に与え続けるだけで、何も変わらないだろう。
彼女の心の闇を取り除くためには、彼女の全てを受け入れられる子ではないと。
嗚呼、私はなれないだろう！
彼女の“こころ”を救える人に。
そんな自分が嫌いで。そんな自分であることを深く実感してしまったから、
みんなと話せなくなった。みんなの輪にいるのが恥ずかしかった。
トガちゃんには、悪い人にも手を差し伸べられる「天性のヒーロー」が必要だ。
むしろ、その罪の先にいる彼女を見通せる人でないと。
ふと、1人の後輩が思い浮かんだ。きっとあの子なら＿＿大丈夫。
私がいなくても。私でなくても。
きっと、きっと＿＿
「君は、ヒーローになれる」
見えたのは太陽。
私を助けてくれたヒーローが、笑っている。
私は何になりたい？
『ヒーローになりたいよ』
『みんなを守れるヒーローに』
『みんなの笑顔を作れるヒーローに』
「君は、ヒーローになれる」
『私も、ヒーローに』
「なれなかったらどうする？」
突如、地面にワープホールが開かれる。
伸びた手に足が掴まれ身動きが取れない。
咄嗟に目印として持っているものを外に投げる。
買ったプレゼントが、宙を舞う。
漏れ出る殺気に鳥肌が立った。
『オールフォーワン……！！』
トガと接触させたのも、彼らの作戦だったのか。
いや、トガ自体にその気は無かったが。
“私とヒーロー社会の心の分裂”を図り、ヴィラン側に取り入れるための、作戦。
転送先は、もう見慣れたバー。
死柄木も主要メンバー全員が揃っている。
「ようこそ、Aさん」
目の前の画面に映し出されたオールフォーワン。
「率直に言おう、君が欲しい」
男は不気味に笑って、そう言った。
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話の展開少し変えました！
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作者名：花氷 ベタ | 作成日時：2022年10月1日 18時
