苦難は続く【トガ】 ページ45
トガちゃんと友達になってから、憂鬱になる日が増えた。
いつもねじれちゃんに抱きついていた筈の手が動かなくなっていたり。
環くんと、どうやって話していたか分からなくなって。
そんな私をミリオくんは不安げに眺めている、
(プレゼントしかないだなんて)
私は今、可愛らしい雑貨屋にいる。
それは贈り物を通じて、話すための話題を作るため。
私は“いつも通り”が出来なくなってしまった。
どうしてって言われれば＿＿頭にトガちゃんがよぎる。
トガちゃんと3人へ思いの差は勿論違う。
一緒にいた年月が違いすぎるからだ。
しかしそれを友人という枠組みで一緒に当てはめていいのか。
ため息をつきそうになった、その時。
「えへへ、Aちゃん。会いにきちゃいました！」
後ろからぎゅっと抱きしめられる。
手加減を知らない強さ。
……絶対会うと思った。
しかしこんな公共の場で「トガちゃん」と呼んでいいのか。
珍しい名前だ、トガと呼んだだけでバレてしまうのではないか。
いや、メディアには彼女の名は浸透していない筈。
つまりは彼女を振り払う理由はないということ。
腹を括れ、報知A…！
『トガちゃんか。どうしたの？』
「えへへ。Aちゃんの気配がしたので会いにきました！」
『そっか。嬉しいな』
ヤバい、想像以上に絆されてる。正直、少し嬉しいと思ってしまった。
あれだ。動物を手懐けた時のあの可愛いさだ。
「Aちゃんは何してたんですか？」
『私はね、プレゼントを買いにきたの』
「わわ！それだったらオススメのありますよ。着いてきてください！」
咄嗟にプレゼントの宛先を隠す。
3人の名前を行ったらきっと彼女は不機嫌になるだろうから。
彼女にグッと手を引かれる。案内してくれるみたいだ。
でも無理やりじゃなくて、少しだけ優しい。
……手加減してくれているのかな。
「見てください、このクマちゃん！」
『か、可愛い！凄い、ふわふわだ』
「このタコさんのマスコット、気持ち悪いですねェ……」
『でも顔は可愛い……待ってめっちゃヌルヌルしてる』
“顔に優しいオイル配合”
「これを顔に塗りたくるんですかねえ」
『初めての人めっちゃ驚きそうだよね、これ』
「何コレ！小さなカバンでしょうか…？」
『ポーチだね。絆創膏とか入れるやつ』
「初めて聞きました……ふふ、カァイイですね」
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作者名：花氷 ベタ | 作成日時：2022年10月1日 18時
