ホワイトデー【波動】 ページ40
『バレンタインのお返しを作りたい？』
「うん！Aももらったでしょ！そのお返し」
え、もらってな＿＿
そんな一言を塞ぐように口を手で押さえる。
そんな私にねじれちゃんは首を傾げて「どうしたの？」と聞いた。
私のバレンタイン。
その日は何もなかった。
何も、何一つなかったのだ！！
「お菓子作ったよ〜」と、私の部屋に訪れた同級生や友達もいない。
去年はあった。その前も年もあった。でも今年は！！！なかった！！！！
私が夜遅くまで特訓で渡されなかったとか……そうであってくれ。ちょっとショック。
ねじれちゃんは恐らく同級生のみんなからもらったのだろう。
少し寂しいけど、それだったらぜひ手伝ってあげたい。
私が「勿論」と言おうとした時、
「あああああ！！！！Aに用事があったんだ！！！、」
叫びながら走る同級生に拉致された。
鼓膜を壊す気しかない叫び声に耳を塞ぐ。
抵抗もできず私は流されるようにねじれちゃんの元から離れていった。
＊＊＊
同級生視点
クラスの隅の方。
Aさんと2人きりの波動さん。
いつもは大勢で囲まれているのに、今日はどうしたのか。
明日はホワイトデー。
何かを感ずる人がいたのか、俺以外にも女子の数人が2人の話を盗み聞きしていた。
ねじれさんがいつもより何倍も小さい声で話し出す。
「ねえAちゃん、一緒にバレンタインのお返し作ろうよ」
『バレンタイン？』
波動さんがさりげなく爆弾を落としたのを聞いて、思わずシャー芯を折る。
バレンタイン。
それは同級生の俺たちが全力でAさん守った日。
……と言っても女子の尻に敷かれただけだけれど。
この計画は女子が中心となって行われた。
Aさんは交友関係がめちゃくちゃ広い。
そしてお馴染みビッグ3とも仲が半端なくいい。
それが問題なのだ。
無自覚束縛マシーンのミリオ。
片思い拗らせ爆発しそうな環。
自覚済み束縛女子の波動さん。
バレンタインを送ってしまった人は……どうなるか分かるだろう。
勿論暴力ではないが、痛い目は見る筈だ。
……どうしてAさんが絡むと深淵がたい見えるのか。
それほどAさんは、三人の闇に近づいている。
俺たちはそんな危ない橋を渡る、
クラスメイトを放っておくほど落ちぶれてはいない。
バレンタインを忘れさせ、いつも通りの日常にする。
それがAさんやみんなのための最善策だった。
××
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作者名：花氷 ベタ | 作成日時：2022年10月1日 18時
