Just do it！【ヒロアカ】 (ページ38)

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『……で、環ちゃんはこれからどうしたい？
　私としては先生を頼りたいんだけど』

「うん、そうしたい、けど、」

『けど？』

突然ついた逆接に困惑する。
“けど”ということは、何か不都合があるのか。

彼女が話すのを待っていたいところだが、生憎もう授業は始まっているし時間はない。

できるだけ柔らかい声で問いただしてみても無言で俯いたまま。

繋がれた手を離して、落ち着かせようと思ったその瞬間＿＿

＿＿彼女に抱きしめられた。

頭が真っ白になるということはこのことなんだろう。

言っちゃ悪いが胸も当たっているし顔も近いしで、心臓もバックバクだ。

しかしその自覚をするのにも時間がかかり、暫く私は環ちゃんにされるがままだった。

『た、環ちゃーん、どうしたの？急に、』
「……ねえ。女の子同士だったらさ。これも許されるよね」

「だって、友達だもん」

だもんって可愛いかよ。

そんな現実逃避をしながら、頭によぎったのは
あの気持ち悪いおじさんの説明書。

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・個性は性別が変わるだけで、害はナイヨ♡
・チョット“本音”が隠せなくなるかも！
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文章の癖の強さから、鳥肌が立つのを堪えながら、内容を思い出す。

……本音？この環ちゃんが？

普段からくっつくこともないし、
何なら手を繋いだことも私が個性事故に巻き込まれた時以外ない。

そんな環ちゃんがこんなに引っ付くなんてそれは。

それは、私の予想に合わせて良いのだろうか。

嬉しいのか、恥ずかしいのか分からない。

彼女は“友達”と言ってくれているが、
今の抱きしめられている状態では顔も見えない。表情が読めないのだ。

でも、分かっているのは彼女が悲しそうだということ。

人に向けられる行為に気づかないほど鈍感でもないし、
自分の気持ちに気づけないほど阿呆でもない。

それでも環ちゃんも、ねじれちゃんも、ミリオくんも。

その奥底の感情を読みたいと思っても、いつも薄く丈夫な壁がある。

触れたい、その気持ちに。
でも彼らが嫌がるのなら……私は、そんな馬鹿な真似しないって信じている。

しかし今、彼女は私のことを“友人”と呼んだ。

だったら友人として私がやるべきなのは、黙って彼女の要望に応えること。

悲しみの胸中に、恋路や友情など関係ない。

今は唯彼女に寄り添うのがヒーローというものだ。