Just do it！【ヒロアカ】 (ページ29)

今日:11 hit、昨日:101 hit、合計:16,764 hit

青い金魚【麗日】ページ29

※ Aさんと仲良し設定。ほんのり百i合注意。

麗日お茶子視点

Aさんは、たまにおかしなことを言う。

それが、特訓の延長線だってことも知っている。

うちはいつも明るい先輩の、たまに出る、
ミステリアスな、謎を秘めた姿が好きだった。

荷物を職員室に持って行く途中のこと。
うちはAさんに声をかけられ、空き教室に入って行った。

『麗日ちゃん。この金魚何色に見える？』

「うーん…赤っぽい紫に見えます」

『でしょ、私も同じ。ちょっと目瞑ってて』

Aさんの言われるがままに目を瞑る。
透明の金魚鉢に水を入れ替える音が鼓膜を震わせた。

普通の水の音だったのに、何故“入れ替えている”と分かったのだろう。

『麗日ちゃん、今度は何色に見える？』

「紫です、さっきと一緒の＿＿＿」

『ううん違う。この子は青色だ』

そう言ってAさんは私の頬を優しく包んだ。
想像以上に顔が近くて驚いてしまう。

それよりもいつもと違うAさんの雰囲気に、
少しドギマギしてしまった。

『息を吸って、ゆっくり吐くんだ。

＿＿＿麗日ちゃん、この金魚は何色？』

美しい金魚鉢の中、乱反射された光と共に泳ぐ金魚は

海よりも空よりも澄んだ、青の金魚。

「あお、色です」

『本当に？』

「綺麗な青色に、見えます」

うちの返答に、Aさんは柔らかく微笑み、両手からうちを解放した。

彼女がそうしている間にも、青の金魚は美しく踊っている。

『帰ろっか』

最後に振り向いた時、私に見えたのは、
“燃えるように赤い”あの金魚の姿だけだった。

＊＊＊

『麗日ちゃん、私が個性かけてたことに気づいた？』

「き、気づきませんでした！！」

『ごめんね。“気づかれないように個性をかける”っていうのが、
今日の補修内容だったの……』

申し訳ないと言いたげに眉を下げて謝る彼女に「全然大丈夫です！！」と叫ぶ。

言えるわけない。
その役に選ばれたのが自分で良かったなんて。

いつもより近い距離に、恥ずかしくなってしまったなんて。

＿＿＿いつもと違う姿を見て、さらに好きになってしまったなんて。