↓ ページ15
嫌な予感がする。
死とか、そんな生半可なものじゃない。
彼の口調は優しく、暖かい。しかし奥底に澱む黒の気配が隠し切れていない。
“入るのが当たり前”と言いたげな圧倒的なカリスマが作り出す雰囲気に飲まれそうだ。
早く、迎えにきてくれないか。
頭がおかしくなりそうだ。
「これは提案じゃないよ。君の出すような“命令”だ。
どうだい？“放送”だなんて甘えた名前はやめにしよう」
「思い出してくれ。君に酷い言葉を投げかけた奴らの名前を」
「口の布を外してくれ。
……さあ、いうんだ」
男がそういうと、トガにより口の布が外される。
彼女は柔らかく笑って、私の耳元で【大丈夫です。受け入れてあげますから】と呟いた。
それでも、私には帰る場所がある。
私には抱きしめて涙を流してくれる人がいるから、
死んでも、絶対に言ってやらない。
そう思いながら私は手を握りしめ、意識を別のところに移した。
「おい、早く言えよ」
顔の近くに炎が当てられる。
ミリオくんの褒めてくれた髪が焦げ、苦い匂いがした。
火傷で目が開かなくなる。痛い、苦しい。
「しょうがないね。強硬手段と行こうか。入るのであれば止めてあげるさ」
「エ〜本当にやるんですか？ついでに血ィ取っちゃいます」
トガはそういい、大きめのナイフで私の足を切り付けた。
痛みで嗚咽が漏れるたび、彼女は嬉しそうな笑みを浮かべる。
血を取られては行けないと分かっているのに、拘束されている状態では何もできない。
腕、顔と、傷口は増えていく。
血を流しすぎて、意識が朦朧としてきた。
恐らくこの出血量では、あと30分も持たない。
個性を使うべきか。
ここはビルの中、外に出れば勝機は＿＿
「マイクを壊しなさい」
オールフォーワンがそう告げた瞬間、
トガはマイクのついている部分を刺し始める。
マイクの場所さえもバレているのか…！
「埋めてあるのも、壊しちゃいますね！」
鎖骨部分のマイクもバレていたのか、
トガは鎖骨を刺し、ナイフの先端でマイクを壊した。
「Aさん、君も生きたいだろう？」
嗚呼、生きたいさ。
生きたいに決まってる
でも、
『私は、ヒーローです』
『自分の身は、惜しくない』
「それは違うぞ！A少女！！！」
短くなった髪の毛が、暴風で揺れる。
天井の空いた穴、
見えたのは、優しい笑顔。
「私が来た！！」
私たちの、ヒーロー。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 56人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：花氷 ベタ | 作成日時：2022年10月1日 18時
