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河村side



「美味しいね、これ。」

『せやろ?結構上手くいったと思ってさ。』



彼女の手料理はいつも美味しい。

昔からの付き合いだからか、味の好みの傾向が似ているのだ。

味覚に限らず、物ごとの考え方や捉え方も似ているため、話していてとても落ち着く。



「おじさんとおばさんは元気にしてるの?」

『うん。なんかまた本番あるとか言ってたから元気だと思う。』

「そ。あなたは?」

『私?』



と、Aが不思議そうにこちらを向く。



「またピアノ弾いてるうちに徹夜したりしてるんじゃないの?」

『うわぁ、やめてよその話。ちゃんと気を付けてるって。』

「ならいいけどね。」



これは遡ること2ヶ月前。

何気なくAに連絡をしたところ一向に返事が来ず、不審に思ってこの自宅を訪れたところ、戸締りもせずに防音室で寝落ちしていたことがあったのだ。

最初に防音室で彼女を見つけた時は、まさか死んでるんじゃないかと思って心底ゾッとした事を覚えている。



「まぁ、気持ちは分かるけど無理はしないようにね。」

『お互いね。』



なんてゆるゆると話していると、気付けば数時間が経過しており、目の前のテーブルにはもう何も乗っていないお皿と空き缶が数本並んでいた。



「じゃあ、そろそろお暇しますかね。」

『あ、片付けは大丈夫だよ。』

「そう?ありがとね。それじゃあ、また何かあったら。」

『うん、了解。気をつけて帰ってね〜』

「あなたも、ちゃんと戸締りしなさいね。」



そう言って、彼女の家を後にした。

Aと話すと、不思議と気持ちが楽になる。

幼なじみっていうのは良いもんだ。

何がという訳ではないが、明日は何だか上手く行くような気がした。

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作者名:きゃる | 作成日時:2021年9月10日 10時

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