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河村side



Aを家まで送り届け、改めて彼女との会話を思い返す。



「落ち着くから、ねぇ。」



深夜で周囲に人がいないのをいいことに、彼女の言葉を反復して口に出してみる。

あの子からしたら、思った事をただ言っただけであって、そこに深い意味なんて何も無いのだろう。

けれど、そんな何気ない彼女の言葉になぜかすごく動揺してしまった自分がいて。

最近、本当に可笑しい。

さっきの須貝さんとの話じゃないが、Aと一緒に過ごす時間が増えた事で、自然と彼女を意識する事が多くなった。

それ故か、彼女の一挙一動、何気ない一言が気になってしまって。

こんな一言だって、今までだったら普通にスルーしていた。

須貝さんに変な冷やかしをされたからか?

いや、違う。分かっている。

僕はこの感情を知っている。

だけど、違うはずなんだ。

だってこれじゃあまるで、僕がAに恋をしているみたいじゃないか。

今まで頑なに避けていたその答えに辿り着けば、スッキリしたという気持ちに、どこか後悔が入り混じる。



「…マジか。」



こんなことがあっていいのだろうか。

だってこれまで20年も一緒にいて、少なくとも僕はその内の何年かは別の人に恋していたし、Aに恋人が出来た時だって特に何とも思わなかった。

もし僕が彼女に恋しているというなら、それは本当にここ数ヶ月での出来事で。

きっかけさえ分からない。

自分で気付くには、あまりにも距離が近すぎたみたいだ。

たかが幼馴染、されど幼馴染。

彼女に幸せであって欲しいという幼馴染としての想いが、一緒に過ごす中でいつの間にか恋愛感情へと推移してしまったらしい。

自宅に着くのとほぼ同時にAから届いた、

ちゃんと家着いた?てかメリクリ〜

なんて他愛のないメッセージにさえ、思わず顔がニヤけてしまう。

着きましたよ。あなたはちゃんと戸締りした?メリークリスマス。

と返信して、ドサっとベッドに倒れ込む。

あぁ、どうやら僕はすっかり彼女の虜だったみたいだ。

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作者名:きゃる | 作成日時:2021年9月10日 10時

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