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河村side
Aのいる輪の中心から少し離れたところで、所狭しと並べられた料理に手をつける。
うん、今日もなかなか。
いつもより少し味付けが居酒屋チックなのは大人数での飲み会だからだろうか。
というかあいつはこんな味の調節まで出来るのか。
少し感心していると、須貝さんがやってくる。
「向こう盛り上がってんねぇ。行かんでええの?」
「まぁ僕はいつでも話せるし、オフィスでは自重しますよ。」
「うわ、マウント取りやがった。」
なんて言う彼に、そんなつもりじゃないですけど、と苦笑する。
でも確かに、最近Aに対して一種の独占欲のようなものが生まれていることは否めない。
「なんか、AがQuizKnockに入った事によって、物理的に今過去一に彼女と一緒にいるんですよ。」
「おぉ、まあそうよね。」
突然何を言い出すんだ、と言う顔で須貝さんがこちらを見る。
うん。僕も自分で何故こんな話をし始めたのか分からない。
「けど、仕事中は基本あんまり話さないし、AはAで女子とか若い子同士で良い感じにコミュニティ作ってるし。まぁ僕もあの子もあんまり他の人と差をつけて接しないように心がけてるんで、当たり前と言えば当たり前なんだけど。」
むしろ今までの距離感がバグってたんだよなぁ。
今でもオフィス外ならこれまで通りなんだけど。
チラリと隣を見れば、何やら彼にも思い当たる節があるようで、
「あ〜分かる。一緒にいるはずなのに一緒にいないみたいな感じでしょ?」
「それです。」
と頷けば、うん分かる分かる、と苦笑いしている。
ナイスガイにもこんな経験があるのね。
気付けばいつのまにか向こうの話題は恋バナになったようで、
「じゃーAは恋人作る予定はないんだ?」
という山森の質問に、
『んー、そうですね。まぁこうやってQuizKnockに入った事で一段と充実しましたし、あと河村さんの面倒も見なきゃいけないですし。』
なんて生意気な事を言っている。
「どっちがよ。」
と口を挟めば、聞いてたの?と言わんばかりの目でこっちを見るA。
こんな距離で聞こえない方がおかしいのよ。
そう思いながら酒を飲み干せば、
「愛されてんねぇ。」
と須貝さんがおちょくってくる。
「…そういうんじゃないですけどね。」
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作者名:きゃる | 作成日時:2021年9月10日 10時