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河村side
Aに席を外させ、彼女の両親と3人になる。
「すみませんね、突然。」
「いやいや、こちらこそ色々Aのこと助けてくれたみたいでありがとうね。」
「それで、伝えておきたい事って?」
「まぁ、急に色んな事を一方的に話しちゃったし、質問とかないかなぁと思って。」
と訊ねれば、僕の予想通りの質問が飛んできた。
「じゃあ…、たぁくんに聞く事じゃないかもしれへんけど、Aの耳っていうのはもう治らへんもんなの?」
「う〜ん、難しいねぇ。」
「それは拓哉くんの専門分野じゃないしな。」
「まぁ、僕なりに少し調べたり、医学部の知り合いに聞いたりしたから、分かるには分かるんだけど。」
そう言えば案の定食いついてきて。
「そうなん?薬で治るもんなの?やっぱりお金かかるん?」
と質問攻めにされる。
「まぁ落ち着いて。そうねぇ、原因にもよるみたいだけど、Aの場合は安静にしていれば回復する可能性はあるみたいよ。」
「え?ならわざわざ音楽辞めなくても…」
そう言って怪訝そうな顔になるおばさん。
「そう思うよねぇ。でも、僕はきっと、Aがピアノを続ける限りは治らないと思うんだよ。」
「どうして?」
「僕もこんな事は言いたくないんだけどね、でもあの子にとって今1番ストレスになっているのは間違いなくピアノなんだよ。だから、一時的にでもいいから一度音楽から離れてみてもいいんじゃないかと思ってね。」
そう伝えれば、2人ともすっかり黙り込んでしまう。
そうだよなぁ、あれだけ期待して、応援していた娘なんだから。
「まぁ、彼女がQuizKnockにいる限りは僕がちゃんと見ておきますから、安心して下さいよ。」
もしそれでまた音楽がやりたいならそれはそれで良いし、と付け加えれば、おじさんが大きく息を吐いてから頷く。
「うん、きっとここ数年のあの子の事は、俺たちより拓哉くんの方が知ってるだろうから、君の判断を信じるよ。」
「せやね。もうほんまに、何から何までありがとうね。」
「いえいえ。」
少しストレートに伝えすぎたかとも思ったが、ちゃんと納得してくれたようだ。
Aの事になるとどうしてもみんな過保護になるなぁ。
けれどまぁ、とりあえずはこれで一件落着か。
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作者名:きゃる | 作成日時:2021年9月10日 10時