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河村side



「でもね、あの子はそれが両親からの愛情だって分かってるから、それが原因だって絶対に言わないんだよ。本当に、馬鹿だよね。」



僕ら以外誰もいない小さな会議室で、伊沢と福良に彼女の話をする。

彼らの表情は、明らかにドン引きといった所だ。



「だから僕もね、ただでさえナーバスな浪人中にこれ以上Aに精神的な負担がかかり続けるのは良くないと思って、何かと理由をつけてはうちに呼んで1,2時間ダラダラ雑談する時間を作る様にしてた訳。ご両親も僕が相手となれば文句は言ってこなかったし。」

「んー、なるほど。なんか、河村さんが過保護になるのも分かる気がするなぁ。」



と、伊沢が苦笑いしながら首を回す。

福良も難しいねぇ、なんて言いながら笑っている。



「言ってしまえば、Aにとって音楽っていうものが一種の呪いになってるから、僕としては申し訳ないけど、彼女の為にもあの子に音楽以外の生きがいというか、道を見つけて欲しいと思ってて。だからこんな事を僕からの2人に頼むのもおかしな話だけれど、Aの事、本当によろしくお願いします。」



この話をして、こんな事を頼んで、何が変わるかは分からないけれど、少しでも何かが良い方向に向けば良いと思った。

深々と頭を下げながら、僕の心からの想いを彼らに伝える。

すると2人も、



「了解。俺らもちょっと気にする様にしとくわ。」

「まぁ、きっとAちゃんなら大丈夫だろうけどね。」



と、笑顔で答えてくれた。

さて、第一関門はこれで突破かな。

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作者名:きゃる | 作成日時:2021年9月10日 10時

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