follow my hand (ページ4)

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ここまで来てしまうとさすがに戻れと言うのも酷な気がして、結局２人で問題を回収することになった。

独特の雰囲気が漂う薄暗い通路を、Aと並んで歩く。

特有の空気感に飲み込まれないように、出来るだけ明るく他愛のない話をしていたのだが、１枚目の問題を回収した後、口数の少なかったAが堪りかねたように口を開いた。

『あの、須貝さん…。やっぱり…その…ちょっと、怖くなってきてしまって…あの、服の、裾だけ…掴ませてもらえませんか？なんか掴んでないと心許なくて…』

申し訳なさそうに呟くAの眉根は完全に下がりきっていて可哀想なくらいだったのだが。

もしかすると、先ほどの自分の話を受けて、Aなりに頼ろうとしてくれたのだろうかと思うと、可愛いなぁもう！と頭の中で呟かざるを得なくなった。

「裾掴むぐらいなら、こっちの方が良くない？」

少しずつ早くなる鼓動を悟られないように笑って、Aの前に右手を差し出した。

『えっ…』

一瞬驚いて動きを止めたA。

わざとらしくは、ない、はず。

でも。

手を繋ぐ、たったそれだけのことが、こんなにも緊張するもんだったか？と視線が泳いだ。

一瞬の間が何倍にも感じられて、しくじったかね、とやるせなさで次の一言を考え始めた時。

手のひらに暖かさが重なった。

『ありがとう、ございます』

「ん。素直でよろしい」

なんて。

どの口が。

一番素直に喜んでんのは間違いなく俺で。

誰だよこんな企画考えたやつ！と撮影外で散々文句を言いまくったトンデモ企画に、手の平返しで感謝した。

そして。

全ての問題を回収し終えて、名残惜しささえ感じながら向かう出口付近。

『須貝さん、あの、ありがとうございました。もう、大丈夫です』

握っていた手のひらからふっと力が抜けて、離れていってしまうその瞬間に、思わず力を込めて引き止めてしまった。

ぶつかる視線に熱が篭る。

「もうちょい、繋いでていい？」

『え、でも…もう、出口が…』

「これはその、これからも、って意味で…。っあー、クソ、こんなとこで言うつもり無かったんやけど」

何がこうさせるのか。

自分でもよくわからない。

ただ確かなのは、繋いだこの手を、離したくない。

それだけで。

まるで何かの力に背中を押されたように、素直に口を開いた。

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